冷徹な現実

足立くんが、荘重なシンフォニーを指揮しているような、清らかなグラウンド。その美しさを壊したくない。佑子はそう思っていた。

何がその原因かは、佑子には分からない。でも、両者無得点で終わった前半の後、後半の開始直後にトライを奪われた。バックスのディフェンスラインの、極めてデリケートな連係ミス。相手校がそれを見定めてアタックしてきたのか、ただの偶然か、それは分からない。でもゴールライン中央に押さえられたトライは、冷徹な現実だった。

そのまま、試合は終盤まで動かなかった。合同ティームとはいえ、その集中力は高かったのだ。でも、毎日一緒に練習しているティームの結束に、どうしても一歩及ばない。ゴールラインへの肉薄は、なかなか果たせない。でも。足立くんが蹴ったボールが宙を舞う。確信を持って蹴ったそのボールは、相手左ウィングの背後を襲った。ワンバウンドの後、相手ゴールラインにほどないタッチラインを割った。

腕時計を確認するレフリー。どうか、あの子たちにもうワンプレーをさせてあげて、と佑子は胸の内で祈る。