先ほどの先行研究は小・中学生対象とはいえ、「AL→学力」と「学力→AL」という相互関係があることが見えてくる。学力がなければALに意欲的に取り組もうとしない、かつALに取り組まなければ学力がつかない、こういうことである。この相互関係性は高等教育にも引き継がれると想定するのが自然だろう。
すると、中堅私学に在籍する中心的学生層(マーケティングの世界で言われるボリュームゾーン)には、教員が想定する基礎学力はもちろんのこと、学ぶ意欲すら欠如した者が無視できない割合で存在すると考えられる。
このとき、中堅私学において無前提に高度なALを実践することは、却って学びから逃避する格好のチャンスを与えるのではないか? 学びから逃避しがちな学生たちが、実社会に出て仕事に真正面から向き合えるのか?(14)中堅私学でALを実践するならば、それ以前にやるべきことがあるのではないか?
大学は文科省から言われる随分前から定期的に教学改革を進めてきた。その目玉がカリキュラム改革である。だが、新規科目を開講したり、科目群の配置を調整してみたところで、それを実践する教員の顔ぶれはほぼ変わらない。だから、姿が変わっても内実はほぼ同じ結果になり、何のためにカリキュラム改革をしたのかが見えなくなってしまう。
ならば、《教員個別の教授スキルを向上するための手段を検討しよう》と提言しても、まず取り合ってもらえないのが現状である。この現状を変えるなら自ら変わってみるしかない。組織変革よりも自己変革、こうした想いが日増しに強くなってきている。