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究極の選択
(選択1)を選んだ場合
和子さんは放射線療法をぜひやってほしいと、牧野医師に希望を伝えた。
牧野医師は快諾し、放射線科の大野医師に相談して、次の日から放射線療法が実施されることになった。転移性骨腫瘍は第7胸椎の増大のみならず、右腸骨(腰骨)にも及んでいた。
大野医師は30グレイを10回に分けて照射を実施することを和子さんに告げ、胸椎と右腸骨に照射を行った。
結果として、骨腫瘍は小さくならなかった。特に副作用も出現しなかったが、足のしびれもまったく改善しなかった。
「いったいどうなってんの、ここの病院の先生たちは。もう全然よくならないじゃないの。やっぱりここでは治してもらえないかもしれないわ。一度他の病院に行ってみようかしら」
その後、某ガンセンターにセカンドオピニオン外来で受診したが、現在の主治医の牧野医師の指示に従いなさいと言われて帰ってきた。
「保険外診療になるのだけれど、免疫療法というのもあるのよ」
お見舞いに来た友人がふと口に出したことが頭から離れず、スマートフォンで調べて、大阪の病院に連絡を取り、敬一さんや娘の春菜さんに頼んで、免疫療法を売りにしている大阪のクリニックに連れて行ってもらった。
初診時に30種類もの腫瘍マーカーを採血してチェックされた。保険診療ではないので1回の治療に多額の費用がかかることもあって、敬一さんが反対して1度行ったきり再び行くことはなかった。
入院してから4か月が過ぎ、牧野医師からも、そして退院支援の看護師さんからも自宅での療養を勧められた。和子さんの病状はさらに進み、骨腫瘍の痛みや呼吸困難のコントロールのためにモルヒネが使用されていた。
現在ではMSコンチンを1回につき10ミリグラム、朝の9時と夜の9時に服用している。
治療方針に対して主治医に攻撃的になったり、家族に強く訴えたりすることがなくなっていた。
「そろそろ家に帰ってクーさんにも会いたいわ」
可愛いがっていた愛猫との再会を願う心境も、時にうかがわせていた。それから程なく在宅医療に向かって準備を進め、自宅近くのクリニックの益田医師が主治医として決まると、入院から143日目に和子さんは自宅に戻った。
帰宅後しばらくのあいだは、愛猫のクーとじゃれあったり、大好きなオレンジジュースをコップ1杯飲み干したりと、少し元気が戻ったように感じられたが、10日もするとご飯が食べられなくなっていった。
また、背中の痛みが強くなってきて、MSコンチンが1日に40ミリグラムになったことも影響して、もうほとんど会話らしい会話がなくなっていた。