「高齢者の終末期の医療およびケア」って何なの
終末期医療の話題は、末期ガン患者の緩和ケアのあり方をその代表的な例として、すでに数多くの話が紹介されています。
厚生労働省や日本学術会議、そして日本医師会など、我が国を代表する機関・団体から、終末期医療に関するさまざまなガイドラインなども発表されています。
また近頃では、尊厳死の法制化運動の話題、さらには平穏死のすすめなど、たくさんの書物やパンフレットで、終末期医療の情報は両手で余るほど豊富である、そんなイメージを持っている人が多いのではないでしょうか。
では、どうしてこの本では、「高齢者の終末期ケア」といったテーマにわざわざ焦点を当てたのでしょうか。
"何も新しい話じゃないよ"
"もう終末期の話なんておなか一杯だ"
"高齢者だけにスポットを当てるとは、失礼な奴だ"
などいろいろと、誰からともわからないご叱責の声が私の耳に入ってきます(幻聴かもしれませんが……)。
ここでどうしても紹介したい提言があります。
それは、
「『高齢者の終末期の医療およびケア』に関する日本老年医学会の『立場表明』2012年度版」
というものです(巻末資料参照)。
日本老年医学会は、2001年に最初の立場表明を出しました。最初の立場表明の作成および検証作業は、学会内部の倫理委員会が担当していました。
私は名古屋大学の老年科医員の立場で、上司である植村和正名大講師(現在、愛知淑徳大学教授)の下で、その仕事のお手伝いをさせていただく機会に恵まれました。
2012年を迎えて、老年医学会の倫理委員会が最初の立場表明の改定作業を行って、新たな提言を発表したのです。
その詳細は資料を見てもらうことにして、その根幹をなす立場をここで紹介します。