お子さんとの意思疎通がうまくいっていないあなたへ
あなたが介護を希望していてもいなくても、あなたが確かなうちに、お子さんと話す機会を設けてください。
普段は問題がないように思えても、あなたとの親子関係をお子さんが内心どう考えているのか、わかっていないことが多いものです。
人間の記憶は曖昧で、特に高齢者は自分の都合のよいように記憶を上書き保存している傾向があります。
親にすれば𠮟咤激励したつもりで、些細なことと忘れてしまったことも、それを受けた子は暴言や暴力として記憶していることがあります。特に思春期に受けた場合は、深くインプットされています。
とりわけ、ほかの兄弟と比べられた記憶は、将来まで深く影を落としています。
過ぎてしまったことは決して元には戻りませんが、お子さんとしっかり話し合って、親子関係を軌道修正しておくことによって、後悔せずに最期を迎えることができるのです。
お子さんが一人であっても複数であっても、親の老後、特に認知症になったり、末期救命医療を受ける状況に陥ったときに、お子さんがどう対処したらよいか困らないようにしておくことが、親の務めだと思います。
お盆休み、お彼岸、年末年始などに、家族が集まる機会をどうか設けてください。
そしてご自身が確かなうちに、ご夫婦とお子さん相互で、わだかまりを解くきっかけをつくってください。ぜひ、親とお子さん全員が情報を共有していただきたいと思います。
親と子が個別に話して納得したつもりでいても、親から自分だけ多く遺産をもらおうとする子が出てくるのは、よく聞く話です。
家族のわだかまりは、案外兄弟姉妹どうしにも多くて、大人になると親があいだに入ったほうが、話は円滑に進みます。
もしもお子さんと意思疎通ができない原因に、思い当たることがあるのなら、介護を希望されていなくても、ぜひお子さんに詫びてください。
意外と早く、あっけなく最後のときは訪れるものです。
遺恨を残したまま、人生を終えることが親子双方によいはずがありません。
できれば遺言状を、皆が納得するかたちで残されることをお勧めします。
よく遺言状と遺書を勘違いされる方がいらっしゃいますが、遺言状は親と子を結ぶ絆であり、ときにすべてを守ってくれます。
親の健康状態により、看取り方も変わってくるので、状況が変わったら、その都度、遺言状を書き換えるのが、よりベストな選択です。
親の看取りの中核を担う人が決まったら、介護と看取りに貢献した人により多くの財産が渡るように、寄与分を明記されておくこともお勧めします。これにより血縁のない、お嫁さんが担ってくれた介護も報われます。
なにも決めてこなかったことにより、親がひどい扱いを受けたり、親子兄弟間での殺傷事件が起こったりすることを、頻繁にニュースで目にします。
殺人事件のじつに半数以上が、親族間で起こっているのです。