印鑑って何の意味あるの?

先輩の指導で最も銀行らしく思ったのが、印鑑を押す場所でした。「いいかー、お前は一番下なんだから、えらそーに真ん中に押してはいけない。一番端のここに申しわけなさそうに押すんだ」

指差す先はA4用紙の一番右下。「印鑑押す場所に意味あるの? 印鑑で申しわけなさそうにってどう表現するの? 大体、印鑑なんかいらないだろ。コンサルでは使わなかったぞ」

最近でこそペーパーレス活動の推進により紙の回付は少なくなりました。それでも未だに印鑑が活躍することがあります。

例えば、託児補助の申請。有難いことに半年に一度、申請すれば学童保育や保育園に支払ったお金が返って来るのです。「全額ではないけど、ありがたーい。戻って来るお金ってなんか得した気分!」大企業ならではのメリットをここでも実感するのです。

申請書を記入後、自分の印鑑を押し、取りまとめ担当者が必要書類を確認する意味で印鑑を押してから人事部に申請します。期限が大分先なので油断している中、新型コロナウイルスの影響で在宅勤務が始まりました。

期限前日、「やばっ、託児申請忘れてた。書類記入しなきゃ」同じく在宅勤務をしている取りまとめ担当者に聞くのです。「在宅勤務中だけど、やっぱり紙で提出しないとダメですか。他の皆さんどうしているのでしょう?」

すると「はい、人事制度上、紙での申請が必要ですので紙で提出してください。郵送でわが家まで。期限明日ですけど、間に合いますか?」……間に合うわけがありません。

ここでも融通が利かない人事制度が申請の障壁となります。「うーん、お金のためにはしょーがない、大っ嫌いだけど人事部に確認してみるか」

スマホ片手に決意します。プルルル、プルルル、スマホの先に出て来る人事部は新型コロナ対応で忙しいのか、すっごい不機嫌。予想通り回答も偉そーなのです。「書いてある通りだよ。はあ? 新型コロナで特別対応ないかって? そんなもんねーよ。お前の事情なんか知らねーし、とっとと手続通り申請しろよ」こうして人事部が大嫌いなことを再確認するのです。

そしてフッと思い出しました。「そーいやぁ、印鑑があるのは職場だな。そもそも書けっこねー。今回の申請見送りだ」得たのは取りまとめ担当者からの同情だけでした(後日、印鑑不要の対応に改まりました)。

「何の意味あるの?」印鑑押すたびに毎回思います。「お前が関与したことを残すためだ」先輩の言葉を思い出します。システム上で回付しても同じことできるのに。印鑑は日本の文化だと思いますが、これも働き方改革でどうにかならないでしょうか。