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憧れの産科医との出会い

初めての出産は不安だらけであり、私は産科を探した。そういえば、ぽんちゃんが通っていた産婦人科の女医さん、素敵だったな。

高校生の頃、ぽんちゃんが産婦人科に行く時、ついていったことがある。そこで会った女医さんがマロン先生(仮)。先生はとにかくかっこよかった。ぽんちゃんも絶大な信頼を寄せていた。

私は彼女の勤務する病院を調べ、そこに受診した。片道1時間半かかる総合病院だった。当時、男性医師が苦手だった私。

「あのう、出産の時、誰が来てくれますか?」

「私が行くよ」

「でも夜中とか休日とか、いつ生まれるかわからないじゃないですか」

「いつでも私が駆けつけるから」

私はマロン先生に惚れこんだ。出産は医学が進歩した現在でも命に関わることがある。もし出産で何かあっても、彼女を恨むことはない、それくらい信頼していた。医者ってやっぱりかっこいい! こうやって人の命だけでなく、心も救うことができるのだ。

それから妊婦検診に行くのが楽しみになった。マロン先生が初めて企画した家族旅行に向かう途中に緊急呼び出しがあり、結局いつも通り自分以外の旅行になってしまった話や、一緒に働く男性医師が美容室で髪の毛の半分をバリカンで剃った直後に呼び出しがあり、アシメヘアで病院にやってきた話。やっぱり医者はすごいや。かっこよすぎる。

でもその反面、私出産怖いの、とマロン先生。

「だってみんな痛そうじゃん!」

私は笑った。人に絶大な信頼を抱かせるオーラと、そこからは全く想像できない庶民感覚のギャップがたまらなく魅力的だった。今日はどんな話が聞けるかな。

20歳になってすぐ、私は長女を出産した。出産は楽しかった。信頼できる先生のもと、命の誕生という貴重な体験ができることが有り難かった。不妊治療が進歩している今でも、皆が妊娠・出産できるわけではない。私は子どもに恵まれ、無事に出産できたことに対して深く感謝し、そして生まれてきた子どものきれいで透き通った目を見て、決して親のエゴや環境で汚さないことを誓った。

もちろん里帰りはしなかった。寝不足や育児の疲れはあったが、何と言っても誰にも干渉されずに暖かい布団で眠れるのだ。横にいる天使の寝顔に癒されながら、ごく普通の幸せな日々を送った。夜間に長女が寝てくれるようになったので、昼間の時間がもったいないと思った私は、何か資格を取ろうと思った。

たまたま見つけたシステムアドミニストレータという試験。パソコン関係の資格で、内容もそんなに難しくなかったこともあり、暇つぶしがてら受けてみたら合格した。知識欲というか、向上心というのか、そういうのは強かったのかもしれない。

同じ場所に留まっていると、世間から置いていかれているような感覚に襲われる。長女が1歳になってからすぐ、彼女を保育園に預けて私はセブンイレブンでアルバイトを始めた。