大学院時代

海外の大学にいたせいか、尖ってしまったのは事実で日本の大学生を正直見下していました。「どーせ、バイトや合コンばかりで大して勉強してないんでしょ。彼らからはあまり得るものないんじゃない?」と思っていたのです。

交換留学生として日本からやってきた学生と話しても、あまり切羽詰まった感がないのです。そもそも交換留学生は目的が異なるので必死に勉強する必要はないのですが、話を聞く限り日本の学生生活はなんとなく緩そうに思えたのでした。

この時知り合った交換留学生のうち、後に足利銀行の国有化で株で大儲けし、名古屋のテレビ塔からドル紙幣をバラまいてフライデーか何かの記事に掲載された人がいました。青山で高級料理をご馳走になったことがありましたので、音信不通の今、この場をお借りして謝意をお伝え致します。

そんな生意気な態度で日本の大学院に進学したのですが、大間違いでした。オーストラリアでは出会えなかった収穫があったのです。

主に三つ、①「社会人になっても勉強は必要」、②「お酒の味」、③「素敵な日本人女性」。

まず①ですが、意外と大学院まで進学する学生は明確な目的を持っていて結構刺激を受けました。特に社会人学生の存在が大きかったです。同じ研究室の先輩に本邦と外資それぞれの金融機関に勤める社会人学生がいて、仕事の合間を縫って自身の業務経験を基に修士論文を作成するひた向きな姿勢に敬意を抱きました。

当然、仕事がありますので研究できる時間はその他の学生と比べて少なくなります。本来なら二年で修士課程を終えるはずが、教授の勧めで三年かけて修了することになる方もいました。「そこまで続ける意味あるかぁ? 修士とったからといってキャリアアップにつながるわけでもないだろうし」と思い、お酒の席で聞いたことがあります。

その方の回答は決して目先の昇格を目指すような短絡的なものではなく、より高いステージに自分を置こうとする向上心の結晶でした。「勉強って社会人になっても必要なんだなぁ」と実感できたのもこの時です。

続いて②のお酒の味ですが、担当教授を含めて皆お酒が好きでよく飲みました。オーストラリアにいた頃は飲むといったらPUBでビールを飲むわけですが、おつまみの概念がなく乾き物があるくらいでひたすら飲むだけ。日本のように食べながら飲むことはなく、ラグビーやクリケットの話をしながら飲むのです。

これはこれで当時全く違和感がなかったのですが、日本はお酒もおつまみも種類が豊富で恵まれているなと思いました。訪日する観光客が居酒屋に足を運ぶのも頷けます。読者の皆様は「何を当たり前のこと言ってるんだ」と思われるかもしれませんが、日本の外に出てみないと日本の良さがわからないことは多いと思います。

最後の③素敵な日本人女性ですが、ゼミ仲間で飲むと、気分がよくなって二次会で六本木に連れていってくれる羽振りのよい社会人学生がいました。隣に素敵なお姉さんが座るようなお店にいくわけですが、決して安くありません。

それなのに、その方はゼミ生複数分の支払いを負担してくれるのです。「さすが外資金融は違うなー、邦銀の先輩はこんなことしてくれないぞ」と畏敬の念を抱きつつ、一次会でよいしょすることを怠りませんでした。

だって気分よくさせないと連れていってもらえないのだから当然です。必死に盛り上げました。