俳句・短歌 短歌 故郷 2022.02.10 歌集「星あかり」より三首 歌集 星あかり 【第92回】 上條 草雨 50代のある日気がついた。目に映るものはどれも故郷を重ねて見ていたことに。 そう思うと途端に心が軽くなり、何ものにも縛られない自由な歌が生まれてきた。 たとえ暮らす土地が東京から中国・無錫へと移り変わり、刻々と過ぎゆく時間に日々追い立てられたとしても、温かい友人と美しい自然への憧憬の気持ちを自由に歌うことは少しも変わらない。 6年間毎日感謝の念を捧げながら、詠み続けた心のスケッチ集を連載でお届けします。 この記事の連載一覧 最初 前回の記事へ 次回の記事へ 最新 ひとりはねみんなのためにみんなはね ひとりのために共同しようよ 一本の貴重な鍵を握りしめ あなたも有るか一本の鍵 柔らかく紋白蝶がひらひらと 羽を閉じては開いて踊る
エッセイ 『プリン騒動[人気連載ピックアップ]』 【新連載】 風間 恵子 「そんなプリンなんか作ってないで、早くメシのしたくしろ!」台所で一挙手一投足に怒り狂う義父。言葉の暴力が鉛となって心臓を突き抜けた。 ある晩のことだった。三人で、夕食のしたくをしていた。この三人と言うのは、舅(しゅうと)・姑(しゅうとめ)・嫁すなわち、私の事である。台所は女の神聖な場所と考えられているのではないか。しかし、この家では、舅が当たり前のように立つことが多い。自分が調理したものは自慢をするが、人の作った料理は決して、美味しいとは言わない。逆に貶す事に喜びを感じるタイプである。野菜の切り方から、味つけまでを一つ一つ指摘…
小説 『春を呼ぶ少女』 【第7回】 桜小路 いをり 白銀に輝くオオカミ…その背後から十歳くらいの子どもが現れた。白い肌に白い髪、そして特徴的にとがった耳。エルフだ。 リリーは、その首をねぎらうようにとんとんと叩き、手綱を握り直します。森の入り口に着くと、フルールはひと声、大きく鳴きました。しんと静まり返った森に、フルールの鳴き声がやわらかく広がっていきます。「ありがとう。始めましょうか」その言葉を合図に、ふたりは走り始めます。リリーは、頬に当たる風の冷たさに思わず目を細めました。後ろへ後ろへと流れていく景色は、冬から春に変わっていきます。硬く縮こまっていた草…