俳句・短歌 短歌 故郷 2021.12.09 歌集「星あかり」より三首 歌集 星あかり 【第83回】 上條 草雨 50代のある日気がついた。目に映るものはどれも故郷を重ねて見ていたことに。 そう思うと途端に心が軽くなり、何ものにも縛られない自由な歌が生まれてきた。 たとえ暮らす土地が東京から中国・無錫へと移り変わり、刻々と過ぎゆく時間に日々追い立てられたとしても、温かい友人と美しい自然への憧憬の気持ちを自由に歌うことは少しも変わらない。 6年間毎日感謝の念を捧げながら、詠み続けた心のスケッチ集を連載でお届けします。 この記事の連載一覧 最初 前回の記事へ 次回の記事へ 最新 散歩道川面に咲いた花抱いて 清く流れる神田川哉 初夏の日のそよ風渡り心地良く 緑にそよぐ上の若枝 飛沫ひまつ散る水道水の勢いに 咽の渇きを思い出す哉
エッセイ 『プリン騒動[人気連載ピックアップ]』 【新連載】 風間 恵子 「そんなプリンなんか作ってないで、早くメシのしたくしろ!」台所で一挙手一投足に怒り狂う義父。言葉の暴力が鉛となって心臓を突き抜けた。 ある晩のことだった。三人で、夕食のしたくをしていた。この三人と言うのは、舅(しゅうと)・姑(しゅうとめ)・嫁すなわち、私の事である。台所は女の神聖な場所と考えられているのではないか。しかし、この家では、舅が当たり前のように立つことが多い。自分が調理したものは自慢をするが、人の作った料理は決して、美味しいとは言わない。逆に貶す事に喜びを感じるタイプである。野菜の切り方から、味つけまでを一つ一つ指摘…
小説 『千恵ねえちゃん』 【最終回】 城 唯士 「ちょっと羨ましかったな」高校の部活は、別世界みたいだった。4人とも黙りがちに歩いていたが…「そうだっ。バンドやろうよ」 「そうよ、お姉ちゃんたちもちゃんと考えているからね」千恵姉ちゃんは背筋をぴんと伸ばしておせち料理の方を見ながら言った。二人にそう言われても僕はなんて答えていいかわからない。お兄ちゃんが横から肩を叩いて「ヒロ頑張れよー」とからかった。おなかがいっぱいになって箸を置いたら由美もおなかいっぱいと言って、テレビをつけた。「お義父さんと昭ちゃんはまだ飲むでしょう」おつまみを別の皿に分けて、お姉ちゃんは片付…