俳句・短歌 短歌 故郷 2021.12.09 歌集「星あかり」より三首 歌集 星あかり 【第83回】 上條 草雨 50代のある日気がついた。目に映るものはどれも故郷を重ねて見ていたことに。 そう思うと途端に心が軽くなり、何ものにも縛られない自由な歌が生まれてきた。 たとえ暮らす土地が東京から中国・無錫へと移り変わり、刻々と過ぎゆく時間に日々追い立てられたとしても、温かい友人と美しい自然への憧憬の気持ちを自由に歌うことは少しも変わらない。 6年間毎日感謝の念を捧げながら、詠み続けた心のスケッチ集を連載でお届けします。 この記事の連載一覧 最初 前回の記事へ 次回の記事へ 最新 散歩道川面に咲いた花抱いて 清く流れる神田川哉 初夏の日のそよ風渡り心地良く 緑にそよぐ上の若枝 飛沫ひまつ散る水道水の勢いに 咽の渇きを思い出す哉
小説 『アイアムハウス』 【新連載】 由野 寿和 静岡県一家三人殺害事件発生。その家はまるで息をするかのように、いや怒っているかのように、大きく立ちはだかり悠然としていた 午前十一時。サイレンを鳴らさず、車両は静岡県藤市十燈荘(じゅっとうそう)に到着した。静岡中央市にある県警本部から十燈荘までは、藤湖をぐるっと大回りして藤市経由でトンネルを通り、小山を登ることになる。藤湖を見下ろす高級住宅街、十燈荘は、土曜の昼だが活気はない。既に外部への交通規制が敷かれているとはいえ、不気味に静まり返っている。ここで殺人事件があったことを、住民達が知っている気配はなかった。その家…
小説 『TOKYOリバーサイドストーリー』 【第7回】 東 晃司 小さいころから一緒にいるのに、誰も言い出せずにいた思い。一通のラブレターが募らせる不安 「行け、行け、行け」マコトのお父さんが今にも死ぬかと思わせる叫び声をあげながら、応援しているのを見て、やっぱり息子が活躍するのは、うれしいんだろうなと思った。「出るぞ、出るぞ」部員たちがざわざわし始めた。見るとマコトが相手の後ろに手をやり、腰から相手を持ち上げようとしていた。僕がユーに「あれって、プロレスのバックドロップじゃないのか」と言うのもつかの間、本当にマコトはバックドロップのように相手を…