【関連記事】JALの機内で“ありがとう”という日本人はまずいない

どのように解決したらよいのか

さて、この【事例4】は、「仲間割れ」というゲームが行われたものです。

「仲間割れ」のゲームというのは、「Aさんが課長に昇進できたのは、部長にお中元として高価な品物を送ったかららしい」といった、同僚(仲間)に関する気になる話をそれとなく会社のなかに流して、それによってトラブルを引き起こすというものです。このような話を流すと、あとは自然に尾ひれがついて話が大きくなっていき、また勝手にどんどん広まっていくことになります。

このゲームでは、自分は話を流すだけで、あとは勝手に話が広がり、自然にさまざまなトラブルを発生させることができます。すなわち、自分は常に批判にさらされない安全な場所にいて、標的を攻撃することができるという点が、このゲームの大きな特徴なのです。

この事例では、首謀者は詳細設計グループの誰かだろうとは予想できますが、では誰なのかは絶対にわかりません。西田さんの何が気に入らないのかが書かれていれば、ある程度の予想はつくのですが、首謀者は巧妙で、それも書いていません。このため、書いた人間が絶対にわからないように仕組まれています。

このゲームは、軽い嫉妬心で男女の仲にトラブルの種をまくといったものから、この事例のように極めて陰湿なものまで含まれているのが特徴なのです。残念ながら、このゲームを仕掛けられないようにする手段はありません。相手が誰かがわかれば対応の仕様があるのですが、このゲームでは相手がわからないケースがほとんどなのです。そのため、ゲームを仕掛けられた後の対応が大切になります。

この事例では、西田さんは怪文書自体よりも、怪文書が出されても、自分を守ってくれない上司や同じグループの部長たちの対応に落胆しています。

つまり、いざというとき、自分を守ってくれるような人物をつくっておくことが大切だといえます。西田さんの場合ですと、例えば、上司のA部長が「こんな文書が出回っているが、俺は西田君を信頼しているから、一切気にするな。何があっても俺は君の味方だ」と一言いってくれれば、あんなに苦しまずにすんだことでしょう。

人間は誰しも面倒に巻き込まれたくありません。まして、その面倒が他人のこととなると、自分の身を挺しても、その人を守ってやろうという人間を見つけることは極めて困難だと思います。しかし、そのような人物や仲間をつくるように、普段から努力しておくことが必要でしょう。

また、そのような怪文書は相手にしないといった態度も有効です。とは言っても、実際にこのような文書を回覧されたら、誰しも、はらわたが煮えくり返るような怒りを感じるのが普通だと思います。

しかし、その怒りをぶつけるべき相手は、巧妙に隠れていて、姿を現さないのです。あなたが怒り狂うのを陰で見て、喜んでいるわけです。つまり、あなたが怒れば怒るほど、隠れた相手を喜ばすだけなのです。怒る気持ちはわかりますが、こんな卑劣な人間を相手にしても仕方がないと考えて、「柳に風」と事態を軽く受け流してしまうことも必要になるのです。

「仲間割れ」のゲームの対処法

自分の味方をつくっておく。あなたが、怒れば怒るほど、隠れた相手を喜ばすだけである。

だから、ゲームを仕掛けた連中を相手にしない。