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出産選択の過去と現在~プライベート出産という選択
近年の出生動向
2019年の出生場所を見ると、出生数86万5239人の内、「病院」47万6240人(55.0%)、「診療所」38万3472人(44.3%)と、病産院で99.3%の出産が行われています。正常産のみを扱い医療介入の行われない「助産所」での出生は、4238人(0.49%)。そして「自宅」での出生は976人(0.11%)、「その他」の場所での出生は313人(0.04%)と、施設外(「自宅・その他」)での出生は、合わせて1289人(0.15%)でした(表1)。
医療の介入する出産として代表的な帝王切開は、日本では増加しています。帝王切開率は、1990年は病院11.2%、診療所8.3%だったところが、2017年には病院25.8%、診療所14.0%となっており、現在は全体でおよそ20%が帝王切開による出産です。
また、出産方法の選択のひとつとして、薬剤によって陣痛の痛みを緩和して出産する「無痛分娩」が注目され、これも、2007年2.6%(推計)だったところが、2014年4.6%、2015年5.5%、2016年6.1%と年々増加しています。そして、不妊治療も進み、2018年に体外受精による妊娠で生まれた子どもは5万6979人と、約15人に1人が体外受精による出生です。
一方で、2019年に病産院以外の医療の管理下にない場所、すなわち「助産所」と「自宅・その他」の場所で出産した女性は、全国でたった5527人(0.64%)でした。2年ほど前に、女子大の1~2年生を対象(看護学科のみではない)としたある授業で、出産するならどこで産みたいと思うかと質問したことがあります。
ほとんどの学生が、「病院以外に産めるところがあるのですか?」という反応でした。今や、これから出産年齢を迎える若い女性たちには、「助産所」はその存在を知られていないようですし、「自宅」で産むなど全く考えられないことのようでした。
存在を知らなければ選択の余地はありません。なお、コロナ禍で自由に立会い者を選んで出産することが可能なのは、こういった場所での出産です。コロナ禍による出産環境の変化は、今後の日本社会にどのような影響がおよんでいくのでしょうか。