アナログとデジタルものづくり
単純な作業や、一般的知識で可能な分野は、AIや自動制御(ロボット化)に置き換わっていく。
今後は、AI・IoT・自動運転・VR・5G・8K・ブロックチェーンなどによりさらにテクノロジーの進化が加速することであろう。このような情報化社会のデジタル化は、日本は世界の周回遅れであり、今後猛ダッシュして挽回しなければならない。
しかし、ここで強調したいのは、ものづくりにおけるデジタル化は、すぐにコモディティ化(代替可能性の経済的価値・サービス)しやすい点である。
コモディティ化したら、巧みの技術がない他社や他国にも、安価に、量産化されてしまう。苦労してアナログ技術を開発し、量産を目指してデジタル化した瞬間に、高い価値が一挙に喪失する。
日本はこれまで何度も、高い価値の技術や商品を、自らコモディティ化した結果、中国・韓国・発展途上国に生産拠点が移り、敗退を余儀なくされてきた。
自動車用金型設計図面の3D化はその典型である。そこで、世界を凌駕してきた現場を熟知した作業者・技術者集団の能力と組織力と、クオリティーの高い日本のアナログ技術の出番である。
例えば、精密プレス工程では鋼板シートのひずみや曲がりを計測する測定装置(IoTデバイス)が設置されつつある。これは鋼板シートのひずみや曲がりが、プレス後の製品の高精度化品質の決め手であり、重要なノウハウ(アナログ技術)である。
これこそ日本の得意とするデジタルとアナログの融合深化技術である。
AIなどはそうした現場の力を増強させる役割が大きい(注4)。アナログの典型である材料(モノ)とデジタル技術は相互かつ補完的に進化していくと捉えることができる。
日本以外の世界で、このアナログとデジタルの融合技術をバランス良く保持しているのはドイツである。将来の中国は別として、両国を凌ぐ融合技術力を有する国は現時点では存在しない。米国ですら、製造技術で日独と真っ向から勝負したら、かなわない。
なぜなら米国は1980年代に製造業を捨ててしまい、ワンセットで自己完結できる技術を持たなくなってしまったから。
1980年代に日本の鉄鋼業は、お世話になった米国鉄鋼業を再興するため、エンジニアを派遣して技術力向上のお手伝いをした。しかし、エンジニアが日本に帰国すると、元の米国スタイルに戻ってしまう。
これを日本技術者は、何度も繰り返した苦い経験をしている。もはや米国企業だけで、ものづくりを自己完結できる完成品工場はできない。航空機産業ですら、機体軽量化技術は日本の新材料が核となっている。
研究から開発・実用化まで一気通貫でワンセットとなった日本材料とものづくりの技術が、米国のみならず中国・韓国・東南アジア諸国から求められている。
AI時代三種の神器は電気・機械・ディープラーニングであり、その融合である。