第4章 フィオリーナからへロイーナへ
第三話 いろいろな麻薬
なぜ、麻薬はやめられないのだろう。麻薬は脳の深い部分に影響する。その脳の深い部分は、食べることや子孫を残すために大切な部分でもある。この部分が、麻薬の影響で変質(へんしつ)してしまうと、脳は「麻薬がないと生きることも子孫を残すこともできない」というまちがった判断をしてしまう。
まちがった判断をした脳が「麻薬をやめるな」と命令するので、麻薬をやめることはとても難しいことになってしまうのだ。依存症になった人の脳には、「麻薬をやめたい」と思う自分と「やめたくない」と思う自分の二人が住んでいる。この二人の力がどちらも強くなると、その人は麻薬をやめることも続けることもできなくなる。どうにもならなくなって、死を選ぶ人もいる。
コカの木からコカインを作るためには、過(か)マンガン酸(さん)カリウムという物質が必要だ。世界の薬品会社の中には、コカインの原料となることを知りながら、過マンガン酸カリウムを売る会社もある。このような会社や銀行や商店などが協力して、麻薬のグループを作っているのだ。
麻薬を売買するために協力し合う会社などの集まりの大きなものは、麻薬カルテルと呼ばれる。ケシ(18)という植物から作られるヘロインという麻薬も、高く売れる。
ケシはとても強い植物なので、荒(あ)れた土地でもよく育つ。穀物や野菜が育たないような山岳地帯(さんがくちたい)に住む貧しい人々は、ケシを植えてアヘンをとり、麻薬の仲買人(なかがいにん)に売る以外に生きていく方法がない。麻薬をなくすためには、貧しい人々を豊かにし、麻薬を作る必要のない国を作らなければならないのだ。