私自身、これまで小児科医の立場から数多くの不登校のケースを見てきた。
その中には、家庭環境、親子関係、学校との問題だけでは、説明のつかないケースが数多くあった。
ちょっと変わった印象を受けるため、いじめにあう子、知能指数が120を超す能力を持ちながら不登校で苦しむ高校生など、今思えば、発達障害という視点でとらえるべきケースであった。
発達障害の中には優れた能力を発揮して世界的業績を残した人も多い。
音楽家のベートーヴェンやモーツァルト、科学者のエジソン、アインシュタイン、ダ・ヴィンチ、画家のピカソ、ダリなど天才的人物が多数あげられている。
二〇〇二年ノーベル経済学賞を受けたたバーノン・スミス(米)もアスペルガー症候群であることを自ら告白した。ウォルト・ディズニー、自動車王ヘンリー・フォード、俳優のトム・クルーズらは学習障害の一つである読字障害だといわれている。
国は、二〇〇三年の全国調査で知的レベルの高い発達障害(軽度発達障害)の頻度が6.3%という驚くべき高値の調査結果を公表し、発達障害者に対する支援強化策をうち出した。
発達障害者支援法(二〇〇五年)、障害者自立支援法(二〇〇六年)、学校教育法改正(二〇〇六年)、特別支援教育の推進(二〇〇七年)と次々と施策を実施し、乳幼児からの早期発見、早期支援の体制の確立を急いでいる。