モチベーションに変えた大学生の私

大学へ進学すると一人暮らしも始まり、今までとはまったく異なる環境の中での生活がスタートしました。大学での講義は専門的な内容のものが多く、講義時間は、高校と比べ長くなりました。さらに、まったく知らない新たな専門知識を一から学んでいくため、講義中に寝ていてはまったくついていけません。講義の内容についていくために高校までとは比べものにならないほどナルコレプシーのコントロールに苦労しました。

一方で、忙しい大学生活の中でも、サークルや飲み会、旅行など高校生の頃に思い描いていた生活は、同級生の中でも人一倍経験することができたと思います。

入学当時の私は、ナルコレプシーだからという理由で諦めていたことがたくさんありました。その最たるものが恋愛です。恋愛というものは、病気があると分かっていたら付き合う人なんていないと思っていましたが、当時好きだった方と付き合うこともできました。他にも講義をサボったことが見つかって、友人と一緒に追いかけてくる先生から走って逃げたり、試験前に友人と泊まり込みで試験勉強をしたり、お金を使い果たすほどライブに行ったりと、とても充実した大切な思い出がたくさんあります。

大学生活の中でも、大きなターニングポイントとなったことがあります。これがなかったら理学療法士になっていたかどうか分からないほど、私にとって大きなターニングポイントとなりました。

理学療法士の養成校ということでカリキュラムに臨床実習が組まれています。臨床実習では今まで経験もしたことのないナルコレプシーとの葛藤がありました。

臨床実習は長くて八週間、臨床現場に身を置き、バイザー(学生指導を担当する理学療法士)の方から指導を受け、学校で学んできた知識・技術を確認するものです。実習地にもよりますが、毎日明け方までレポートを書き、十分な睡眠時間を確保できない生活が続くこともあるため、健康な学生さえも見学中にウトウトしている姿を見ることは日常茶飯事です。

私の場合、睡眠不足の状態では日中にナルコレプシーの症状をコントロールすることはほぼ不可能な話です。実習が始まる前から、ナルコレプシーのコントロールができるのか不安で仕方ありませんでした。今だからこそ言えますが、隙間時間でトイレへ行き仮眠をとったり、昼休みに寝たりと様々な工夫をして必死になって実習を乗りきりました。

実習後にバイザーの方から「病気をコントロールしてよくやっていた。現場でも大丈夫でしょう」と言っていただけた時は、本当に泣けてきました。

この時の涙は何の涙なのかよく分かりません。やっと苦しい環境から離れることができるからなのか、実習を終えた達成感なのか、バイザーの方に認めていただけたからなのか、トイレでこっそり寝ていたうしろめたさなのか。実習を乗りきるための工夫が正しいカタチだったのか未だに判断できません。

実習を終えた時に、実習を乗り越えた安心感の裏に、「本当に理学療法士になっていいのか?」といった不安が生まれていました。