バクチク
家に居づらくなった子どもたちは、町に出る。
小さな町だから、歩いていると同じように居場所探しの友達に会う。出歩くのは決まって夜だ。家族と一緒に過ごすはずの夜。そして毎晩出歩いていると、刺激がほしくなる。
ある夜、ゆうすけが市民プールに行こうと言い出した。深夜の誰もいないプール。夏だったから、水はきっときれいなはずだ。
あたりに誰もいないことを確認し、鉄格子を乗り越えた。わくわくが止まらなかった。服のままドパーンと飛び込んだ。その気持ちの良いことと言ったら。楽しくてたまらなかった。
別の夜は泊まっている船に乗り込んだ。運転席に入ろうとしたが、カギが閉まっていて、船を動かすことはできなかった。
「誰か来る!」
逃げ足だけはみんな早かった。一瞬にして散り散りになる。そしてほとぼりが冷めた頃、いつもの場所に集合する。
男友達と遊んでいる時でも、まきとまりとは仲が良かった。3人でまきの家にお泊まり会をするため、まりの塾にまきと迎えに行ったことがある。なかなか塾が終わらず、暇をもてあましていた。そこでお迎えの合図にバクチクを鳴らすことにした。
静かな夜に鳴り響く爆音。音に驚いて飛び出してくる塾の先生。笑いが止まらなかった。
「もう! 授業中笑いこらえるの大変やったんやけ!」
講義を終えたまりと合流して、バクチク話に盛り上がった。