俳句・短歌 四季 2021.09.30 歌集「漣の夢」より3首 歌集 漣の夢 【第73回】 上條 草雨 中国江蘇省・無錫に留学し、その地の美麗さに心奪われた著者が詠み続けた、珠玉の短歌二一〇〇首と三九首の漢語短歌を連載にてお届けします。 この記事の連載一覧 最初 前回の記事へ 次回の記事へ 最新 庭先の艶あでやかに咲く淡紅花たんこうか 一つ二つと多数咲き出す 友達ともたちのお誕生日祝賀して 漢方鍋かんぽうなべで仲良く食事 街灯がいとうの灯りを受けて枝葉えだは揺れ 寝息立ててる安らかな木々
小説 『曽我兄弟より熱を込めて』 【最終回】 坂口 螢火 用意した死に装束を、我が子に着せる。まだこんなに小さいのに、斬首だなんて…私が身代わりになって死にたい! 青天の霹靂とは、まさにこのこと。聞いた母の驚きは尋常のものではない。「エ――エッ! 何と、何とおっしゃいます!」声さえ別人のごとく裏返って、「厭です! 厭です! 渡しません、断じて……」絶望的な悲鳴を上げ、曽我太郎に取りすがって泣きわめいた。その母の絶叫に驚いて、一萬と箱王が「母上! いかがなさいました」と座敷に駆け込んでくる。「オオ――一萬、箱王」母は無我夢中で二人を左右にかき抱くと、黒髪を振…
小説 『人生の切り売り』 【第14回】 亀山 真一 彼は私をベッドに押し倒し、「いいんだよね?」と聞いた。頷くと、次のキスはもう少し深く求められ… 【前回の記事を読む】「席に着くなり上着を脱いだろ?」襟元の開いたシャツを指されて…全て見抜かれているような気がした。「覚えてないから言いますけど、よくそんな女と付き合ってましたね」「あすみちゃんは初めて俺を見つけてくれた人だから」「え?」「俺はいい人で安牌で基本的に友達コースなんだって」「……私、そんなこと言ったんですか?」「いや、君以外のいろんな人が」彼は自嘲気味に笑った。「あすみちゃんのマイ…