誰もが価格を簡単に知り得るものであればそういうことはあまり起こりませんが、交渉するモノやサービスによっては業界相場のレベルが曖昧であったり、きちんと調べないとわからないものもあるので要注意です。

避けなければならないのは交渉相手がきちんとした業界相場を把握しているのにこちらが把握していないことです。これでは間違いなく交渉で不利な立場に追い込まれます。

特に近年ではインターネット検索によって、以前に比べ格段に世間相場(業界相場)の足がかりとなるものを調べやすくなっています。

まずネットで下調べをして、その後にその分野に詳しい人を見つけて話を聞いてみることをお勧めします。

交渉相手先の情報が十分でない場合

本章では交渉前の準備の大切さを強調してきましたが、交渉相手先との取引歴が長くない場合など、なかなか情報の厚みがないこともあるかと思います。

その場合に心掛けなければならないのは、交渉の途中、特に初期段階で相手から直接情報を得ることです。

そのためにどうしても知りたいと思っているが入手できていない情報については、交渉しながら相手から巧みに聞き出すことを心掛けましょう。

その準備として知りたいと思っている事項をまずは列挙し、きちんと整理して記憶しておく必要があります。但し、気をつけなくてはならないのは、交渉相手としては交渉上不利になることは当然話したくないわけです。

従い、先方の核心的利害に影響することから聞き始めるのは避けなくてはなりません。なるべく核心的利害から遠そうなことから少しずつ聞き出すことです。

それは交渉に入る前の世間話の間やその日の交渉が一旦終了して別れ際に交わす会話の中でもチャンスがあれば、たわいなさを演出しつつ、さりげなく聞き出すのです。

そうすることによって情報が厚みを増していきます。その厚みの中に先方の核心的利害に近い事項のヒントがあるかもしれませんし、あるいは第三者の誰かからその情報を得ることが可能かを示唆するヒントが隠されているかもしれません。

そういう意味では聞き上手であればあるほど多くの情報が得られます。交渉の場において自分たちの正当性をやたらと説明しようとする人がいますが、こういう人は交渉上手とは言えません。

一旦自分の考えをぶつけてみてあまり反応が芳しくない場合は、即座に聞き上手に変身し、その原因を相手から聞き出すように努めなくてはなりません。

私の経験では、相手に沢山話をさせることに成功すれば、だいたい交渉を上手くまとめることができたものです。

聞き上手は交渉上手なのです。