初等、中等教育における転換点
中学・高校以上に特に小学校のカリキュラムはこの10年で大幅に変わってきています。
10年前の学習指導要領改訂では、外国語活動が高学年(5、6年)で初めて追加され、初等教育からの語学学習に対する意識づけが徐々に浸透するようになってきました。
さらに昨年、児童の語学力の構築を目的に学習指導要領が全面改訂され、高学年で外国語が教科化されるようになり、週2時間の授業が必須になった他、中学年(3、4年)での外国語活動の実施も明文化されました。
自治体によっては低学年の段階から外国語活動を採り入れている学校も増えてきています。
ですが、私立では小学校から英語教育が早くに行われており、入学当初から週2時間以上の授業を確保したり、英語のみでネイティブの先生とやり取りするなど公立に先んじて積極的に取り組んでいる学校がほとんどです。
特にミッションスクールではその傾向が強く、中には小学校の段階から難易度の非常に高い中学・高校用の教科書を使っている学校もあるほどです。
近年は、英語教育を行う幼稚園や保育園も全国各地で増えていて、それぞれの園が独自のやり方で子どもたちを教えていると聞きます。
英語でモンテッソーリ教育(イタリアの女性医学博士マリア・モンテッソーリが考案した子どもの発達段階に応じた環境整備を行い、教具などを用いて日常生活の練習や感覚、言語、算数、文化などを学ぶ教育法)を行う園はその一例です。
また、授業のほとんどを英語で実施している学校もあります。
このような手法はイマージョン教育と呼ばれ、国語以外の教科を英語など特定の外国語で学ぶ体系のことを言います。イマージョン(immersion)教育は、英語のimmerse(浸す)から語源がきていて、1960年代にカナダで導入されました。
カナダの公用語は英語とフランス語で、フランス語圏のケベック州では英語の習得とフランス語の習得を目的にイマージョン教育が行われ、英語を英語で学ぶことやフランス語をフランス語で学ぶことを通じてお互いの言語を効果的に学習するシステムを確立しています。
日本での英語によるイマージョン教育は、静岡の加藤学園暁秀初等学校が1992年に開始したのが最初で、30年弱を経た今では加藤学園の他にも、ぐんま国際アカデミーや広島の英数学館、福岡のリンデンホールスクールなどがこのイマージョン教育を使って子どもたちの外国語能力習得に努めています。
加えて、公立校でも実施校が出てきており、岡山市立石井小学校や愛知の豊橋市立八町小学校などでイマージョン教育が始まっています。