理性と寛容性をなんとかつなぎとめていた糸が、ぷつんぷつん、と続けざまに切れる。
「ミュウのアホたんちん! 本気で心配しちゃったじゃない!」
「あれ、心配してくれたのか」
「そりゃあ、するわよ。だって……」
だって、友だちなんだから。
「そうか、ありがとう」
ミュウが、わたしを見て、ぽつんと言った。
「え……べつにお礼言われるようなこと、なにもしてないし……」
急にどぎまぎしてしまうわたし。すなおなんだかひねくれてるんだかわからない、ミュウのこういうところに、わたしはすごく弱い。ていうか、ミュウは、明らかにわたしのそういう弱点をわかっていて、突いてきてるんじゃないかと思う。
「だいたいにおいて、きみは、ちょっとタンパラすぎるんだ」
「タンパラ?」
「気が短い、ってこと。北海道民なら、みんなふつうに知ってる」
「気が短くなんてないし、北海道民でもないから」
「まあまあ、でも、ちょっと考えてみてよ」
そう言いながらミュウは、オセロの盤上にパチパチと駒を並べた。
白・白・黒・白・白。
「六月になってからぼくは、それなりに心を入れかえ、二、三日に一度は教室に行くようにしてた。それは、きみだって認めてくれるだろう?」
「うん……」
「でも、ぼくはプログラムで動く機械じゃない。たまにはふっと休みたくもなる」
ミュウは、中心に置かれた黒い駒をぱちん、と裏がえした。
「ほら、現象としては五日間休んだように見えるけど、事実は、出るつもりだった一日を休みにした、というたったそれだけのことなんだよ」
「なるほど、そうかあ―なんて言うわけないでしょ!」
「今言ったよ」
「シャラップ! 黙らっしゃい!」
わたしは、盤上の白い駒を、端からすべて黒にひっくりかえした。