無いない尽くしからのスタート
私の開業は、仕事は無い・顧問先も無い・お金も無いという無いない尽くしから始まった。28歳という若さだけが武器であり、経営に関する経験や知識といったビジネスに関する資産は持ち合わせていなかった。
一般的に独立開業と聞くと既に開業されている事務所で就業し知名度を上げながら、仕事のやり方から経営に至るまでの勉強と並行して独立資金を貯めてから行うのれん分けや既に開業されている事務所の後継者として後を引き継ぐといったものを想像すると思う。
士業として広く認知されている弁護士業と同様に、開業社労士になるまでに勤務社労士として一定規模の社労士事務所で就業しながらスキルを磨き、満を持して独立を行う場合が多い。
士業には14の業種があり、そのうち8士業と呼ばれる「戸籍・住民票など職務上必要な場合に請求権が認められている」業種がある。それらが、弁護士・弁理士・司法書士・税理士・海事代理士・社労士、その他に中小企業診断士、公認会計士である。
これらの国家資格所持者は、国家資格の資格認定が法的に担保されるとともに、その多くにおいては独占性が法的に守られている。つまり、資格を所持しないものがこれらの業務を行い対価として金銭などの報酬を受け取ることを禁止しており、仮に業務を行うとそれぞれの法律により罰せられることとなる。
しかし、独占性があるとはいえ、資格を持っていれば仕事が降って湧いてくるというわけではない。弁護士は国民の大半に知れ渡っており、税理士は経営者の大半に知れ渡っているだろう。
しかし、他の資格はそれほど認知されていない。知名度の高低差は非常に重要なものであり、それによってその資格を生活の糧とすることができるのかどうかが決まるのである。時間と労力をかけ、資格を取得し、独立したとしても生活が成り立たないのであれば、会社で就業し、一定の収入を得ていた方が安全である。