ベンチャー企業家への支援策不足

『日本経済新聞』2020年7月20日によれば、評価額が10億ドル以上のベンチャー企業である“ユニコーン”は、2019年時点で、米国が200社、中国が100社を超える。

この中にはものづくり関連の企業も多数ある。

ところが、日本はわずか数社に過ぎない。ユニコーンを増やすためには、ベンチャー企業の前段階である大学の研究成果を形にするインキュベントが大切である。

2019年9月の経産省の調査によれば、各大学の研究成果を事業化した件数は東京大学300件弱、京都大学200件弱、次いで大阪大学、東北大学と続く。インキュベント事業には失敗がつきものであるが、東大はユーグレナ(藻を燃料化)を設立した出雲充氏が後進の企業育成に力を入れている。

他人の目を気にして、失敗を恐れ躊躇する現代の若者への先輩の経験談や指導が、彼らの意欲を育んでいる。(注1)

勢いを失いつつある日本の研究開発動向

ものづくりの背景となる研究開発分野では、残念ながら次第にその勢いを失いつつある。

主要国の研究論文数の推移をみると、2004年までは米国に次いで日本が2位であったが、2005年以降中国に抜かれたのみならず、他の主要先進国が増加傾向を示す中でも、日本だけが減少傾向から抜け出せないまま、順位を下げている。現時点では、米国と中国が年間25万本強であるが、日本は5万本を割りつつある。(図1)

[図1]主要国の研究論文数の推移

さらに、世界知的所有権機関(WIPO)によれば、日本・米国・中国の特許出願数の比較では、中国の躍進が顕著で、日本(30万本)はおろか米国(60万本)さえ抜き去り、140万本に届く勢いである。民間を含む研究開発費の比較も同様な傾向となっている。(図2)

[図2]日本・米国・中国の特許出願数の比較

戦前は中国の魯迅・孫文・周恩来ら、その後活躍する中国の若者が日本で学んだが、今では優秀な若者ほど、米国に留学するようになり、日本は見向きもされなくなってしまった。

国際会議で痛感するのは鉄鋼・自動車・電気電子機器の米国の企業幹部や大学の教授が、中国・韓国・インド人でほとんど占められるようになったことである。

彼らは、留学後もそのまま米国に住みついた。逆説的だが、そのことが米国のものづくり産業を下支えする源泉にもなっている。