課題曲と通話記録
海堂はコンシェルジュの勉強を続ける中で、気になる楽曲に出くわしていた。
「ちっぽけな愛のうた/咲良オハラ」「告白/hatsune工房」
それぞれの詳しい解説は別の機会を設けるかもしれないが、一方は弦楽器、他方は鍵盤楽器に生命線があると断言しても過言ではない構成。
全幅の信頼を寄せているフィグや、先日からメンバーに加わってくれたジュリア。
彼女たちがキーパーソンとなり、企画が動いていく。そんな予感がする。
「しぇんぱい?」海堂のシャツの裾をつかむ女の子。
「おっ、おう。ジュリアさん、だったよね? 初めまして、日々輝海堂といいます。以後、お見知り置きを」
「ジュリアでしゅ。ピアノのことなら任しぇて下しゃい。弾くんだったら、工房の鍵盤パートとか弾きたいな」
「へぇ、僕も好きだよ、工房の告白をコピーしてみようかって話もちらほら」
「しょれは楽しみでしゅ。告白は骨太なピアノソロがありましゅからね」
「ジュリアさんは、その繊細な指からは想像もできないくらい、力強い音を奏でるって評判みたいだね。その実力をいかんなく発揮して下さい」
「お任しぇあれ! 練習用に工房のCD+Blu-ray買っちゃおうかな?」
ジュリアは「サ行」が上手くいえない子だが、おそらくキャラというか、意図的にやっているのかもしれない。
今後も注意してみたい。
『通話』【海堂】×【紅弥】
「それにしても、すげぇ飲みっぷりだったな! 感謝してるぜ、相棒」
「ふん、あんなの朝飯前よ。ギャランティさえ振り込んで貰えるなら、どんなウワバミだって、成敗して遣わすわよ!」
「はは、依頼が毎回酒の飲み比べとは限らないだろ?」
「なぁに、言ってんのよ! 人生なんて呑む! 打つ! 買う! 呑んで、打って、買って、なんぼのもんでしょうが。 たまには四つ葉館にも顔を出しなさい。 もっとも、今はジュンジュンが中心となって忙しく賑やかにやってる中途なのだけど」
「おぉ、そうか。じゃあ、早く土産話こさえて凱旋しないとな」
「それで、プロジェクトは、今、どのくらい進んでいるの?」
「限りなくゼロに近いよ。根本から見直すことになったんだ。まぁ、折を見て、第二の故郷の海に沈む夕日でも拝みに帰るよ。我ながら詩人だ。ちょっと、巡波にも電話してみるよ。今度は落ち着いて酒を酌み交わそう」
「ええ、楽しみにしてるわ。それじゃね」