日常

赤のYシャツ、黒のネクタイ、サスペンダー。茶髪、口紅、アイシャドウ……

♪まっぶたのうっえにフフーフフーフーフー

♪うすいくちびるーにフーフフフー

「んー、新しい男でもできたか?」

「カイドゥ、おはよ。ま、そんなとこかしら」

硬派のCDコンシェルジュ

「お客様がお探しの商品は右から2番目の棚……ご案内致します」

懇切丁寧な接客で、客を目的の棚へと誘導できた海堂は、良く糊が利いたこだわりの紺碧ポロシャツの胸ポケットのメモ用紙に「ロックとクラシックの融合」と素早く記入する。

ボールペンの蓋をして、トップスと同系色のワークパンツのポケットに挟んだ。数は多くないにせよ、格式高いクラシックと若者文化が融合した企画盤が、ロックだ、パンクだ、フュージョンだと、様々なジャンルから収穫されている模様。

今回は人気バンドが手掛けるロック×クラシックの第二弾を、お客様がご所望された。海堂はシンガーソングライターになる夢を持っていた。

しかし、最近は口ずさむフレーズに「愛着」も「執着」もなく、その日限りの歌謡SHOWで終わることが多い。好きが高じてCDが何千、何万と保管されている職場で働くことを選び、そこそこ当てにされているから、居心地は良かった。

海堂は過去に四つ葉館で同居していたある女性に想いを寄せていた。過去形では語れない想いが、彼の心中に、深く深く。硬派な男は、四つ葉館の紺碧の扉が開く度に、あの長いスカートがたなびく光景を思い起こす。

しかし、大抵は室内犬を抱えた紅弥の散歩帰りだとわかり、小さく小さく、溜息を洩らすのであった。

ジェラートとサブリナ

美少女制服探検隊GELATO

星巡波が契約している雑誌名。

グラビアデビューは14歳で、当時は本名の安達輝【あだちひかり】で載っていたが、16歳の時に迎えた、読者が決める、No.1清純派美少女決選投票で、巡波は後続に3倍の投票差をつける圧勝で、その企画に則り清純派→星巡波という芸名を付されるに至る。

GELATOでは制服、体操着、水着、下着……大体この4パターンで撮影がおこなわれるのだが、巡波は下着でさえ、さほど抵抗なくファインダーの前に笑顔で立った。