漢方薬で治る不登校の子もいる
「頭がボーッとする」「手足がほてって眠れない」「足腰が冷える」「胸がつかえて苦しい」などと訴えるケースに出会うと、西洋医学的にどう対処すべきか困ることが多い。そういう分野ではむしろ東洋医学(漢方治療)の方が威力を発揮する。
西洋医学では病因を一元的にとらえ、症状や訴えはその反映ととらえるから、訴えが複雑で多岐にわたると、病因をしぼり切れず、対処に苦慮する。
東洋医学では病気を体全体のひずみととらえ、個々の症状をひずみの反映ととらえるから、症状や訴えは多様な方が治療の的をしぼりやすい。そのため、患者の訴えや症状をくわしく聞きだすことが必要で、患者自身が自覚していない症状や訴えまでも上手に引きだして、治療の方向性をさぐる。
患者の訴えを丁寧に聞き、そこから治療法を模索する医学の分野に心身医学がある。心身医学では、症状や訴えを心の悲鳴ととらえ、症状の背後にある心理的背景をさぐり、それをいかに解決するかに治療の力点がおかれる。これらのケースの中で、登校前になると、嘔気や頭痛や腹痛などの身体症状を強く訴える場合、漢方治療が劇的に奏効することがある。
不登校を疑われ、当院を受診した小中高生は過去三年間で二百二十一人いたが、その中の二十五例(11.3%)は心理治療を行わず、漢方治療だけで、元気になり登校を開始した。二十五人のうち八人は漢方薬服用の翌日より、登校を再開した。十二人は一~二週間以内に再登校した。
これらのケースの多くは、これまでいろいろな検査やカウンセリングや薬物治療を受けてきたがよくならなかったものだ。心理治療を行わず、漢方薬だけでよくなるケースをはたして心因関与の不登校といってよいかどうかは別として、不登校を思わせるケースの中に漢方治療が奏効するケースがあることは事実である。
西洋医学と東洋医学は相反し対立するものではない。両者の違いを認識し、その持ち味を活かして、互いに連携し合えば、医療の質はさらに向上するはずである。