だれかがぼくらを待っている
ミミズの子どもたちが行ってしまうのを見ながら、カラスのヘンは思いました。
「わたしの声も、捨てたものではないな」
気持ちがとっても明るくなっていました。
キツツキのツンも考えていました。
「わたしが今までいやに思っていた癖も本当は良いことかもしれない」
なんだか自信が体中にみなぎる気がしました。
フクロウのフンはうつらうつらしながら夢の中で独り言を言いました。
「わたしは、どうやら美しい月やたくさんの星に囲まれた幸せものなのかもしれない」
その夜フンが見た夢は今までで一番楽しい夢でした。
そのころ、はじめての遠足から帰ってきたミミズの子どもたちも興奮して大騒ぎしていました。ミミズの先生は手をたたいて、みんなを静かにさせるとこう聞きました。
「皆さん、楽しかったですか?」
子どもたちは口々に
「楽しかった」
「楽しかった」
と、叫びました。
「カラスはどうでしたか?」
先生が聞くと、生徒の一匹が答えました。
「あんまり大きな声なのでびっくりしました」
すると、先生が言いました。
「本当にそうですね。大きな声でしたね。わたしたちにはとてもあのような大きなとどろくような声はだせませんね」
先生はまた聞きました。
「キツツキはどうでしたか?」
今度は別の生徒が答えました。
「気持ちの良い音でまるで歌うように木をつついていました。すごいと思いました」
先生は言いました。
「確かにそうでしたね。気持ちの良い音でしたね。わたしたちにはとてもあのような音はだすことができませんね。ましてや、木に穴をあけるなんてことは絶対できません」
先生はまた聞きました。
「フクロウはどうでしたか?」
少しだけ羽に触れた生徒のひとりが答えました。
「ふわふわした夢のように軽い羽でした。子守唄を聞いてみたかったです」
先生は言いました。
「本当にそうでしたね。夢のようなふわふわした羽でしたね。先生もできることならフクロウの歌う子守唄を一度は聞いてみたいものです」
生徒だけでなく先生も楽しかったのです。にこにこしながら先生は付け加えました。
「カラスも、キツツキも、フクロウもわたしたちよりずっと大きくて、力があって、立派でしたね」
それから、また、先生はみんなに質問を投げかけました。
「わたしたちはどうでしょうか? わたしたちにも胸を張れることがありますか?」