生徒たちは顔を見合わせて答えに困りました。見てきた地上の様子や、生き物たちにすっかり圧倒されていたからです。ミミズの子どもたちにとってはどこまでもそびえる山のように大きな木々、ジャングルのように茂りあう草、見上げることもかなわない高みに住むカラスやキツツキやフクロウの姿でした。
しかし、ミミズの先生は胸を張って言いました。
「実は、わたしたちにも、彼らに負けないぐらいの立派な力があります」
ミミズの子どもたちは、何だろうと、またお互いに顔を見合わせました。先生が一段と大きな声で言いました。
「カラスや、フクロウや、キツツキはみんなどこにいましたか? みんな高くて、太くて、美しい木の上に巣をつくって暮らしていましたね。あの木々はどうしてあんなに立派で、背が高く、美しくなったと思いますか?」
先生は生徒が答えるすきを与えませんでした。すぐに自分から答えを言いました。
「それはね。みんなわたしたちミミズが土の中で働いてきたからです。昼も夜もわたしたちミミズは良い土を生み出すために休みなく働いてきました。わたしたちがいなかったら、この地球はちっぽけな草一本さえ育てることができないんですよ。知っていましたか?」
子どもたちはみな、小さいときからお父さんやお母さんからよく聞いて知っていました。これまで何百年も、何千年も、何万年もミミズの家族は地下で土を掘り起こし、耕してきました。その働きで地上には美しい花が咲き、作物ができ、木々がしげりあったのです。
先生はさらに力をこめて語りました。
「さあ。みなさん。胸を張って地上を美しくするために神様がわたしたちミミズにゆだねてくださった大切な業にこれからも心をこめて取り組むことにしましょう」
「はあい」
ミミズのこどもたちは声をそろえて元気よく答えました。それから自分たちの小さなスコップを取り上げると先生のタクトにあわせ、頭を振りながらこれまで何万年もミミズたちの世界で歌い継がれてきた歌を歌い始めました。
「働け
働け ミミズたち
葉っぱつやつや
作物 どっさり
野原の花よ、絶えず咲け
森の木々よ、どんどん伸びろ
働け
働け ミミズたち
みんなは知らない
みんなは見ない
そんなことは どうでもいいこと
働け
働け、ミミズたち」