増えすぎた空き家
筆者は1986年(昭和61年)から30年かけ、全国3259の市町村役所・役場に公共交通機関だけで行った。
その途中で平成の合併があり、市町村数は1742に減ったが、合併後は支所や出張所となった旧市町村役所・役場にも行った。行ったと言っても庁舎の写真を撮ってきただけだが、その間に感じたことは、日本は広い上に人が減り続けているということだった。
荒れたままになった休耕地、放置されたままの工場跡地や予定地、無人となり放置され朽ちようとしている家屋、半分以上、いや下手すると9割近くの商店が廃業や休業している商店街などを全国いたるところで見た。
そのなかでも空き家に限って言えば、現在わが国ではそれが増え続けている。戦後の高度成長期に大幅に増えた住宅総数は、ここ10年くらいで伸びが減ったというものの増加基調は変わらない。
総務省統計局のデータによると、2018年(平成30年)の住宅総数は6242万戸、これに対して空き家は846万戸で空き家率は13.6%、7軒に1軒は空き家ということになり、今後も空き家率は上がりそうである(図1)。
一般に空き家というと地方の過疎地に多いものと思われ、実際に空き家率の高い北海道夕張市の40.0%を筆頭に旧産炭地や大都会から遠く離れた市町村が上位を占める。
しかし空き家の戸数については1位・2位は東京都の世田谷区・大田区であり、それぞれ5万戸近い数に上っている。なおこの順位は、政令都市は行政区単位に集計しているものなので、例えば横浜市全体では約18万戸ある。だから空き家問題は戸数が多い大都会の方がより深刻なのである(図2)。
空き家が増えそれを放置したままにしておくと、さまざまな問題が生じて来る。移転のところで述べた経済的な問題のほかに、老朽化した家屋の火災や崩壊など周辺住民の安全が脅かされることになる。
特に地震や台風などの自然災害が発生した時など、放置されたままの家屋は破損や崩壊のリスクが大きく、それが隣近所の家屋に損害を与えてしまうことが大いに考えられる。