【前回の記事を読む】「俺に女の格好しろと! そんなことできねぇーできるかってんだ!」「長身で細身、顔もイケメン。お前が適任なんだ。」
第一章 学園祭は決戦の場
まだ、言い到らなさそうな蓮だが、建築の話が出ると顔か変わる、
「うん。それは作ると言うよりも、部屋を暗めにして。映像で今、世界にある異質な建築物で組み合わせていこうかなって思っている。例えばNYの巻き貝の形をしたグッゲンハイム美術館。斜めに突き出た柱が鉄骨の屋根を持ち上げている蒲郡(がまごおり)市民体育センターの建築物。これは少しダレス国際空港の建物に似てるけど。それからー」
「待った! 熱い思いは受け止めた。その熱さでコスプレも引き受けて。さあぁ急ぐぞ」
柚子はコスプレの要請をしながら、蓮の話の腰を折る。
「蓮。諦めて頑張れ」
含み笑いを隠しながら陽が励ます。
「お前がやれよ!」
毒づき叫ぶ蓮のことは陽以外は誰も気にしていない。
「悪い。模擬店頑張ってまーす」
中央棟の模擬店は扉を開けて野外左右に水風船の的当て、瓦割りなど遊びどころがあり、焼きそばフランクフルトなどの軽食はその次に設置。屋内に入りメイド喫茶、執事喫茶がある。最奥に各種占いコーナーと。これらで草案で決定。あとはひたすら作るのみ。
メイド服は案外ロリータ持っている子がいて拝借。執事服はお父さんの背広を裁縫部が改良。本当この学校の裁縫部は、開校当初からある部活で歴史があるせいか、何でもできちゃうんだよね。感服! さぁさあ、なんか練り上がってきましたよ。
そんなこんなで、あっという間に一週間は過ぎ。明日は本番。
まず理事の方々の来訪。多分それほどは時間が掛からないと思うけど。高評価を期待したいものだ。あとは自由。ヤッター! 苦労した分思いっ切り楽しむぞ。
喜んでいる最中、職員室に呼ばれた。何と貴檣高校生徒会長柘植正巳からの電話だ。
警戒心いっぱいで受話器を取ると、
「突然の電話で驚かしてしまいましたか? 実はかねてお話ししておりましたように、学園祭へのお招きを、頂きたいと思いまして、よろしいですよね。学園祭実行委員長、松本柚子さん」
バカ丁寧な落ち着き払った声だ。
「来られてもお構いもできませんし、忙しくて気が付かないかも知れませんけど」
柚子は突っぱねてやった!
「私たちは制服で参りますから直ぐに知られるとは思いますが、どうぞお気遣いなく。君たちのように勝手に見させてもらいますが、できれば松本さんには案内をお願いします」
うーっこのー。この前の私たちの行動を暗に非難しているということね。