「えぇえどうぞどうぞ。私ら太っ腹なもんで。どれだけ見ていってもらっても構いませんよ。来年の参考になるんじゃないかしら。じゃこれで失礼」

叩きつけるように受話器を切ってやった。本当にいけ好かないよあの眼鏡!

大声を上げている私に、驚かれている先生方へは何の説明もなく、失礼しますと言うと大股で職員室をあとにした。

学園祭の最初は、生徒は各部署で待機のまま、見えられる理事の方々に向けてのアピールをまとめ、練習した成果を披露する緊張の時である。そして訪れた理事たちは、白い巨塔の総回診のように歩を進めていく。

漫画を主材料にした割には理事たちにも結構評判は良かった。

昔はやった『巨大ロボットG』を入れたのは成功だった。おじさんたちの青春に刺さったみたい。理事たちが帰られてからはリラックスタイム。さあ楽しむぞ。

そこへあいつたちが来るのよね。はぁ~あ!

『貴檣高校生徒会面々。来ました』校門に詰めていた一年生からの報告。

「お招きありがとうございます」

眼鏡くんは一声発し、ずらーっと並んだ向こうの面々。こっちも負けちゃいられないと柚子は、「ちょっと早く来て!」整列して出迎えてやる。

何か怖そーな奴らだ(コスプレしている蓮だけは、みっともないからヤダと言って抜けている)。

「これはこれは、早々にいらっしゃいましたのね。どうぞご自由に見ていって下さい。私共はそれぞれ諸事忙しくしておりますから、見送りまではできかねると思います。それでは、ごゆっくり。失礼します。行くよみんな!」

言うだけ言って、さっさと背中を見せてやる柚子に声が掛かる。

「電話で言いましたよね。委員長松本さんに案内をお願いしますと。委員全員の方では迷惑でしょうからお一人だけでしたら。いいですよね!」

何と案内しろと。前の電話で言ってたけど無視しようと思っていたのに。こんなに大勢の前で言われちゃ断れない。長身から見下ろして言ってくるさまが気に入らない。

仕方なく柚子だけ案内して歩くことに。

「みんな楽しんできて。私もちゃっちゃっと終わらせて後追うから」

「柚子。俺たちの頑張ったところよく見てくれよ。待ってる」

颯太は残念そうに見つめて言ってくる。

 

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