俳句・短歌 句集 2021.07.14 句集「八ヶ岳南麓」より三句 句集 八ヶ岳南麓 【第19回】 浅川 健一 八ヶ岳の麓で暮らす医師の、四季折々の俳句集 この記事の連載一覧 最初 前回の記事へ 次回の記事へ 最新 下の子の顔が半分冬帽子 総立ちの白菜ひとつづつ包む 病院のバス来るまでの頬被り
小説 『アイアムハウス』 【新連載】 由野 寿和 静岡県一家三人殺害事件発生。その家はまるで息をするかのように、いや怒っているかのように、大きく立ちはだかり悠然としていた 午前十一時。サイレンを鳴らさず、車両は静岡県藤市十燈荘(じゅっとうそう)に到着した。静岡中央市にある県警本部から十燈荘までは、藤湖をぐるっと大回りして藤市経由でトンネルを通り、小山を登ることになる。藤湖を見下ろす高級住宅街、十燈荘は、土曜の昼だが活気はない。既に外部への交通規制が敷かれているとはいえ、不気味に静まり返っている。ここで殺人事件があったことを、住民達が知っている気配はなかった。その家…
小説 『毎度、天国飯店です』 【第11回】 竹村 和貢 朝は故郷から送ってくる米と味噌汁で食事を済ませ、昼は三百円までの食事を学生食堂でとる。 鍋を囲む三、四人が話題を共有するようになり、会場には再び喧騒が訪れた。その喧騒の中にぐつぐつとすき焼きが煮え立つ音と甘い割り下の香りが混じり始めると、話し声は次第に低くなっていく。「下宿生の人は、腹いっぱい肉を食べることって、滅多にあらへんと思うてすき焼きにしました。まあ、すき焼きはぼくの好物でもあるんやけど。ひゃっ、ひゃっ、ひゃっ」サークルの穏やかな新スタートに、今出川は嬉しそうだった。今出川…