新年

2016年1月1日元旦

新年を病院で迎えた。朝、ホールで他の患者さんと朝食を待っていると、

「初日の出が見えるよ!」

とある患者さんが言われたので、窓の方を見ると山際にはっきりとオレンジの太陽が見えた。それを見た瞬間、『来年は絶対に病院でない場所で初日の出を見よう!』と決意した。

お正月を感じられるメニューの朝食を目の前に、感謝しながらいただいた。入院中での食事は本当に楽しみだ。私は、まだ柔らかめのご飯だが、それでも食べられることの幸せを日々、感じていた。

食後は処方された薬を飲まなければならない。私の薬は看護師が管理していて、毎食後、テーブルまで薬を持って来てくれていた。食事後、薬を飲む。

「ありがとうございます。ご馳走様でした」

1日3回のルーティン。リハビリ専門病院は、年中無休だ。元旦からも当然リハビリである。これには、正直驚いた。しかし、当時の私にとっては忙しいくらいが、ちょうどよかった。

なぜなら、余計な悩みを持つ時間がなくなるのだから。眠気はまだまだあったが、何故かリハビリに積極的に取り組むことができた。

特に足のリハビリは、療法士に組んでいただいたメニューをクリアしていく喜びも大きかった。学生時代に運動をしていたおかげか、リハビリがきついとは感じなかった。そして、頭で筋肉の動きをイメージしながら、リハビリメニューに取り組んでいた。

脳出血で半身麻痺になったのが、足に関しては、『スポーツでケガをしたんだ!』と、架空の設定をつくった。その方が、リハビリに前向きに取り組むことができる気がしたからだ。

脳出血から現実逃避したということでもないが、今思い返せば、いかに前向きに行動できるかを、自分なりに模索していたのだろう。まずは車椅子から立ち上がり座る、という動きの練習を繰り返す。

麻痺を起こしている右足はすべてが不安定なので、装具をつけていただきリハビリをする。立ち上がる時には、視線を床に落とし、しっかりと前傾姿勢のイメージで腰を上げ立ち上がる。

不思議と視線が前を向いたり、顔が真っ直ぐに前を向いていたりすると、上手く立つことができない。そんな時、若い頃スキーをした経験があったことを思い出した。

高校の修学旅行が初スキーで、社会人になってから趣味でスキーに行った。10回ほど行ったと思う。スキーでは重心が後ろにいくと決まってこけたものだ。

でも恐れずに重心を前に乗せ、膝の力も使いコースを滑っていくと、転倒することもなく、気持ちよく滑れた。過去の体験は体が覚えてくれている。座る・立ち上がるという動作は早くクリアできた。