赤犬の家
闇の非合法のサイト『怨み・ハラスメント』に一つの投稿が届いた。
差出人は、匿名で横浜市の高級住宅街の住人のようだった。
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横浜市青葉区にある公園で、数年前の六月下旬の朝、そのゴールデンレトリバーは口輪をはめられ、短いリードで柵に繋がれていました。私が保護した時、被毛は濡れ、おなかのあたりは泥にまみれていました。
三カ月後、警察から「飼い主が名乗り出た」との連絡がきましたが、「三カ月もなぜ探さずに放置していたのか」と疑問に思い、飼い主を名乗る女性から事情を聴きました。
女性は「同居相手の男性が犬嫌いで、その男性が公園に勝手に犬を置いてきた。その男性とは今は別れ、また犬を飼えるようになったので返してほしい」と。
ですが、私が保護した2週間前にもその犬は別の公園内に放置され、近隣の人に保護されていたそうです。2回にもわたって犬を放置し、今回は三カ月も名乗り出ないとは、飼い主として信頼できなかったため、返還を拒みました。
その後その女性から返還と慰謝料を求める裁判を起こされ、裁判所は元の飼い主の所有権を認める判決を下しましたが、私は到底納得ができません。
その家は、近所では『赤犬の家』と呼ばれていて、その周りの家ではよくペットの犬や猫が行方不明になっているそうです。夜中にペットの鳴き声がよく聞こえていたといい、噂ですが、捕まえたペットを調理して食べ、多数のペットの死体が床下に眠っているとも言われています。どうか真相を明らかにし、悲しい目にあったペットたちの怨みを晴らしていただけませんでしょうか。
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闇サイトの管理人で、『怨み・ハラスメント』の女司令官・須戸麗花は、執事兼用心棒のハインリヒ・フジオカに尋ねた。
「フジオカ、この投稿どう思う?」
「はあ、本当なら可哀そうな話ではありますが、まさかこの女性の近所のペット問題に私共が首を突っ込むわけにもいきませんので」
「ああ~そうだな。よしこの投稿の真意とこの『赤犬の家』とやらについて、山田くんに徹底的に調べさせろ」
すぐ山田くんから返事が来た。
「はいは~い山田でございます。『ペット』と掛けて『梅雨時に素足で廊下を歩く』と解く。その心は、『ペットペト』!」
「つまらん、座布団取れ! さっさと報告しろ」