仲間と居場所━━with my Ni**az

スキンヘッドが突然ベンチから立ち上がり、チョコレートとドランクに言った。“Chill,chill!(冷静になれよ!)”ツインズやチャビもその場を和ませようと話題を変えたり、冗談を言ってみたりするが、それでも2人の怒りは全く収まらない。

そのときである。

スキンヘッドが大声でラップを始めた。仲間と一緒に過ごしているこの時間について、ジョークを交えながら、彼は仲間に必死に語りかけている。大きく頭を上下に振り、膝を曲げながら地面を踏み付ける。私はこのとき、一瞬バラバラになっていた彼らの心がまた一つになったように感じられた。私たちは皆、スキンヘッドのラップに黙って耳を傾けている。気が付くと、チョコレートとドランクの顔には笑みがこぼれていた。

ドランクがうなだれながら言った。「なあ、おまえらだって問題、抱えてるだろ? 俺の気持ちわかるだろ? おまえらも同じだろ?」「ああ、わかるぜ」。一人ひとりが静かに頷いた。彼らはそれぞれに「何か」を背負わされているのだろうか。

今度はいつ、どこでまた、誰の心が張り裂けそうになり、誰がこうして気持ちを爆発させてしまうかわからない。そんなとき、ただ黙って側にいてくれる仲間の存在、自分の言葉に黙って耳を傾けてくれる仲間の存在にどれだけ救われるだろうか。彼らの中には、簡単には切れない絆があるように思えた。

「何か」を背負っている者同士の絆の強さである。それは生きづらさであったり、心の傷であったりするかもしれない。

ドランクは少し無理をしているようにも見えるが、冗談を言い合いながら、仲間と話し始めた。そして、何事もなかったかのように、私の方に顔を向けこう言った。

“Where you from?(=Where are you from?)(どこ出身?)”

“Japan.( 日本)”

“For real?(=Really?)(マジで?)”

ツインズが口を挟む。

「そう言えば、高校のときよ、日本人の女友だちがいたぜ。ちょうど彼女に似た感じの」と言って私を見た。彼らにとっては、日本人も中国人も韓国人もほとんど見分けがつかないので、その女性が本当に日本人であったかは疑わしい。