ANOTHER NEW YORK
Queens Bridge(クィーンズ橋)
「あっ、これ、見たことある」。ストリートを歩いていて、ふとそう感じた。
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マンハッタンから眺めるこの長い橋、夜になるとHoodを華やかに飾るこの大きな橋、通りの角に立ち、私がいま見渡しているこのストリート、孫らしき若い男性にしっかりと肩を支えられながら、おばあちゃんが一歩一歩ゆっくりと歩くこのストリート……。
NasのCDジャケットに確かあったはず。Nasが愛して止まないQ.B.。彼のHoodにこうして立っていると、人々の底知れぬユーモアと大きなやさしさの中に、ときに感じられる怒りや深い悲しみが、私の心に真っ直ぐに響いてくる。
In the heart of the city...隔離されたように見えるこの空間。Hoodに広がる一定の静けさの中に確かに感じられるもの。それは、現在進行形で「生きている」人々の息づかいと鼓動……。
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マンハッタン島からクィーンズ区に架けられている大きな橋、Queens Bridge。夜になると、Brooklyn Bridge(ブルックリン橋)と同様、きらびやかに夜空に浮かび上がる。
地下鉄でクィーンズ地区に入ってすぐ、この橋の下、もう一つのHoodがある。ここもまた、プロジェクト密集地域だ。
まわりには、たくさんの工場が建ち並ぶ。煙突からもくもくと噴き出す灰色の煙が、さらにQ.B.の空と空気を汚す。
橋を支える鉄の太い柱にはスプレー缶で描かれたたくさんの落書きと誰かのTag Name。その横には誰が処理するのかもわからないゴミ袋が何層にも積み上げられている。