また、換金性の高いものでは広葉樹からの薪や木炭などの燃料用途が挙げられます。木材価格の下落は林業の衰退を招きましたが、皮肉なことに森林の量的充実には貢献したのではないでしょうか。
しかし同時に、林業の衰退は森林の手入れを停滞させ、森林の質的な劣化を招いています。銀行の話なのでお金になぞらえますが、フローとストックという会計学の考え方があります。
今更ですが、とりあえずフローとは1年間の増減、ストックとはその時点で貯蔵されている量、と言っておきましょう。森林経営をビジネスとして考えると、森林という固定資産にもとづくストック的なビジネスと言えると思います。しかし、実際に私たちが目にするアクションは、年度ごとの伐採量と売上、経費や人件費などのフロー的な管理に終始しています。
森林経営においては、これまでフロー経営だけでストック経営がおざなりにされてきたのです。戦後の拡大造林ブーム時に「スギ、ヒノキを植えておけば将来必ず儲かる」と言われていたそうですが、これは「とりえず家計のストックは定期預金に」という発想とまるで同じで、フローが痛んで不良なストックが増えつつある、というのが現在の森林経営の状況と言えるのではないでしょうか。
もっとも、森林生態系の維持だけを見れば、有効利用されずとも別に問題はないのです。ただ、山に入りにくくなる、野生生物の被害が増えるなどの、ある意味「人間」側だけの問題があるだけです。それが、森林の質的な劣化です。そしてその劣化を食い止めるため、改善するために、森林にはストック経営が必要となるのです。