「だって、アクバルがあたしを見るのよ」マワーラは瓜が二つぶらさがっているような不格好な体をくねらせた。この子ったら、胸をゆすって見せれば、男はよろこぶと思っているんだから。
アクバルはウルトでもっともイケてる男だ。背が高く、ちょっぴり鼻が長いけどハンサムでおしゃれ、なんと言っても大臣の息子で、独身。ウルトの女子はみんな、アクバルに恋しちゃってるのだ。
「あたしはこれくらいしなきゃ。イルゴの娘はブスばっかりだって思われちゃうじゃない」みんながだまっているので(もう、うんざりしてるからだけど)、マワーラは羽かざりを振り立てて、ケラケラ笑った。
「あたしたちは、今夜はダリヤ姫のお祝いのために踊るんですからね」そう言うと、マワーラは口を「へえ~」の形にして、にったりと笑った。
「ミラン、わかってないのお? ダリヤはね、キジル王の女になるのよ。あっちに着いたら、その夜のうちにプヨプヨのおっさんにヤられちゃうの。そんなのムリ~」
クネッと、マワーラの腰がよじれた。
「あたしはやっぱり、運命の星結びの人にささげてあげたいわ」
あきれた。あんたには星結びの男が何人いるのよ。
「あんたさ、昨日は『歩けなーい』ってさわいでたじゃない。ちゃんと踊れるの?」
昨日、マワーラのすねを思いきり蹴とばしてやったのだ。
「そうそう、本当は昨日、叔父さんの家に薬草を持って行く約束だったの。あんたのせいで、行けなくなっちゃったじゃない」
マワーラは、今さら足をさすってみせた。
「どうしても今日中に持って行かなきゃいけないんだって。薬草がとどかなくて、叔父さんがこまっちゃってるの。今から代わりに行って来てよ」
「今朝、あんたのお母ちゃんに会ったけど、そんなこと言ってなかったわよ」