インドの上場会社が合弁相手(合弁会社設立の背景)
この会社は、コインバトールにあります。
インドの某上場会社から一部事業を買収し、合弁を設立するスキームにおいて、まず私は、その上場会社の取締役に就任し、その後、合弁会社の取締役に横滑りする構図をとりました。
上場会社の取締役に就任して直面したのは、事業を買収する時の企業評価額への疑問と、ディスカウントキュッシュフローを組むときのWACC(加重平均資本コスト)への疑問でした。
事業買収のスキーム・オブ・アレンジメントは、高値だから通るでしょうが、あとは大丈夫かと、不安になりました。
この法務処置はインド上場会社側の役目ですので、彼らがタミールナドウの高裁を合法的に通しましたが、売上予測からして、売り手のほぼ言い値であったことにはおどろきました。
次に愕然としたのが、どう考えても不可解な企業評価額に加え、51%株式を保有し、なおかつ過半数の役員を配しているのに、通常決議権が認められていない状態だったことです。
年度計画の承認、決算、ひいては取締役会で承認される短期借入の実行まで拒否権が付与されており、これでどうやって企業運営するのかと気が遠くなりました。
運営に着手
そうした背景のなか、事業買収、合弁の設立、合弁の運営に着手しました。
まず、人事、経理、工場管理等すべての規定書を作り、指導して守らせることから始めました。当然、財務取締役の必須5項目も実行しました。
それまでは、北インドのヒンドゥ語圏の皆さんとの会社運営でしたが、今回は、人種も言語も異なるタミルナドゥの皆さんとの運営です。
合弁契約締結前から、組織の大枠も株主間で議論されて決まっていましたが、どうしても譲れない部分は、あらためて合弁相手の社長に直訴して直してもらいました。
規定書の整備
人事では、次の中央政府の法律に対し、合弁相手の手を借りながら規定書を手直しします。
中央政府の法律に対し、州で決議する法律による多少の修正が入るので、タミルナドゥの地元の専門家の協力が不可欠です。合弁会社の人事責任者は、合弁相手の力を借りる前提で、私が採用した係長でした。
このタミルナドゥの合弁会社が従う労働関係法も、前述34ページで記載した労働関係の諸法令であり人事規定書を整備する前提となります。それらを改めて記載いたします。
雇用契約=Contract Labour(Abolitionand Regulation)Act,1970
雇用条件=Factories Act,1948
賃金-給与支払い=Payment of Wage Act,1936
賃金-最低賃金=Minimum Wage Act,1948
賃金-賞与=Payment of Bonus Act,1965
賃金-退職金=Payment of Gratuity Act,1972
雇用契約解除-解雇(個人的理由によるもの)=Industrial Employment(Standing Order)Central Act,1946
人員整理・レイオフ(一時帰休)・人員削減(retrenchment)・整理解雇=Industrial Disputes Act,1947
労働組合-組合の組織と権利=Trade Union Act,1926
労働組合-労働争議=Industrial Disputes Act,1947
経理では、子会社の管理連結を親会社が扱うのですが、会計ソフトが異なるので、社内の管理と決算用のデータを分けて考えました。
財務取締役の直属の経理担当者も私が採用した係長で、意思疎通がスムーズに進みました。経理の領分は、原価計算、日々の伝票起票、棚卸、決算、財務、資金繰り、資金調達、保険契約、税務、納税、税務調査対応、給与・社会保険、給与計算と支払い、などです。