古田先生との想い出

今から二十五年以上前になるが、三浦十美雄さんをリーダーに月一回、少人数の集まりで親鸞の勉強会を開いていた。ある時、形式ばったお寺の話ではなく、生身の親鸞について知ることができないかという声があがり、勤務先の関係で東京に住んでいらした古田武彦先生にダメもとでお願いしたところ、築地本願寺の集会室で、十名ほどの人数だったが親鸞のお話をお伺いすることができた。

今にして思えば、私たちは非常に貴重な体験をした訳だ。後日談だが、講演の後江戸銀の座敷で先生を囲んでの会食となった。失礼ながら先生の靴下は穴が開いており、白いワイシャツの下にはアロハのTシャツを着込んでいたのかカラフルな色が透けて見えていた。そんなことは意に介さず親鸞について熱弁を展開されていたその姿に、参加したメンバーの誰もが"本物の学者"を目の当たりにできた幸せをかみしめていた。

その後も新宿のダイナース、町田NHK文化センター、また文京区民センターでの共同研究会など古代史の著作と講演・勉強会で先生との厚誼が深まった。

平成二十年(二〇〇八年)八月の夜半過ぎ我が家の電話が鳴った。声の主は古田先生からで、電話口の向こうで、今発見したばかりの内容を熱っぽく語っていらっしゃった。続いて、九枚の原稿がファックスで送られてきて、その韓国語訳の依頼を受けた。この論文はその時の想い出深いものだ。

古田先生から届いた原稿