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内臓の神秘、その前に

これをずっと上までたどってゆくと、第7頸椎の棘突起と頭蓋骨の後ろの外後頭隆起との間では項靭帯となっている。

僧帽筋や板状筋の一部はこの項靭帯から始まっているらしい。うなじという言葉からは、何か色っぽい印象を受けるが、そんな事お構いなしに、解剖を進めてゆく。

頭板状筋と頭半棘筋を切断して、その下に有る頸半棘筋を出す。この頸半棘筋をたどってゆくと第2頸椎axisの棘突起へ停止する事がわかる。頸半棘筋はそれぞれが途中で融合して、一つの板状の、ニワトリのとさかのように幾つも切れ目の入った、鋸のこぎりのような形の筋肉である。

一方では幾つかの頸椎から出た筋束のすべてが融合し、axisに停止しているように見える。骨学上の話だが、この第2頸椎と第1頸椎は特異な形と組み合わせをしているが、これは後の頸椎か頭部でまた出てくるだろう。

さて幾つかの筋や血管、神経をたどって、脊髄へ移るためにまずする事は、テキストによると固有背筋を完全にむしり取ることらしい。

ふと、よその班を見ると、何やら見た事のない道具を手にしている。テキストをのぞくと、その双鋸そうきょという道具の図が有る。脊柱管を開くという項目だ。

棘突起の両側をきれいに清掃して、とあるが、我々はその前に、固有背筋を未だ除去してない。取りあえず、腰部の辺りから、剝がしてゆく事にして、一端を持って持ち上げた。

すると、思いがけず、一連なりになって、筋肉が細長く、めくり上がって来た。地面に埋められた細長い棒を、はしっこを摘まんで持ち上げるような具合だった。

ところが、ある距離まで持ち上げると、抵抗があった。ぐいと力を入れると、ばりばりと音を立てて、残りの筋が一気にはげ上がった。何ごとだろうと、近くの班の生徒たちの視線が僕らに集まった。助手の先生たちも、不安そうに僕らを見た。何か言われるのかと身構えたが、先生は黙って通り過ぎていった。

次に頸部から仙椎にかけて、棘突起の列の両側を清掃して、横突起と椎弓板を露出させる。高尾がいつの間にか、さっき見た器具、双鋸そうきょを持って来ていた。