逆境とピンチは才能を引き出してくれるチャンス

Adversity and crises are opportunities to show your ability

個展を終えた私は、すぐに雑誌の原稿に向かい、イラストを描き始めました。

長い原稿をじっくり読んで、誰もが分かる一枚の絵にする。絵には文章を読ませるチカラがある。重要な役目だと思って本気で描きました。

初めての経験でしたが、伝える手段が違うだけで、教師のやっていることと同じだと思えました。

仕上げた絵を担当の男性に渡す日、出版社まで出向きました。そして、担当者からなかなか良いと絶賛されたのでした。落ち込んでいたところへ出展のお誘い。

そして、作品を描いていた電車内でのスカウト。それが小さい頃からの憧れにつながったのでした。雑誌の発売当日、ワクワクしながらページをめくると、ホテル・ニュージャパンの記事に私のイラストがありました。

そして右下には、私のペンネーム。新しい世界を見た気がしました。

教師としては認められなかったことに落ち込んだ私でしたが、新しい自分を発見したことで、「誰からも評価されなくても、足りない部分はしっかりと反省する。後ろ向きに考えず、自分らしい大きな心で生徒に向かえば道は開ける」と思えたのでした。

その後も、体育の教師と並行して、ティーン雑誌、アウトドア雑誌、クッキング雑誌、主婦向け雑誌、陸上競技の専門雑誌などのイラストを描くようになりました。

中でもサッカーの専門雑誌では、Jリーグ誕生前から開幕までの3年間、連載ページでイラストを担当させていただきました。毎回、出版社から送られてくる筑波大学の教授の文章を、一枚の絵にする作業です。

ヨーロッパのクラブチームの視察を重ね、Jリーグを誕生させるまでを読みながら、貴重な仕事をさせていただけました。そして、文章を読み、それを一枚の絵にする作業は、生徒に分かりやすく教える作業と同じだと思えたのでした。

仲間に追い越されて、自分だけ取り残されたことは、つらいことでした。評価のことばかりにとらわれ、ネガティブなことばかり考えていた中、憧れていた現場とつながり、それが教師としても役立ち、前向きな転機となりました。

そして、その翌年に副担任を任され、その次の年には念願のクラス担任に抜擢されたのでした。