ちょっと清躬さんに事情が─
橘子は警戒しながら、相手の女性を見た。最初は感じのよい女性に見えたけど……いま警戒心を持って見ても、やっぱりわるい女性には感じられない。そう見えるひと程、人を欺くことに長けているかもしれないから注意は必要だが、橘子の本心としてもそういう女性に見たくなかった。
嫌いやなことを考える自分も嫌になる。かの女が本当に清躬くんとつきあっている証據みたいなのがあれば安心できるんだけど。
「あ、実は─」
棟方さんが不意に言葉を挟んだ。沈黙の空白は橘子によくない想像と臆測を広げさせるばかりであったので、相手の発言で橘子はちょっとほっとした。
「スリーショットなら、あるんです」
見ると、スマホを手にしている。
「スリーショット?」
橘子は声のトーンが高くなった。棟方さんはスマホに指を当てて操作している。
「え、ええ。あの、これ」
そう言って、スマホを橘子の前に差し出す。
「あ、はい」
受け取ってディスプレイを見ると、写真の画像だった。
人物が三人いる。
慥かにスリーショットだ。一人が男で、二人は女性だ。女性に挟まれているまんなかの男性は─清躬くんだ。
念のため、画像を拡大する。
清躬の顔がはっきりわかった。
これは慥かに、清躬くんだ。笑顔でいい表情。流石に二十歳を過ぎてりっぱな成人男性になったという感じだ。高校一年の時に会った清躬は、自分より年少の感じがするくらいまだ小学校時代のおもかげを残していたが、それは同級生と比較してそう感じたのだ。それに写真で見るからおとなっぽくおもうので、実際に会うと、昔とあまりかわっていないと感じるかもしれない。そうおもう程意外にかわっていなかったのがおどろきでもあり、安堵もした。残念なことになっていなくて、よかった。裏切られなかった。本当によかった。
清躬の右横の女性が棟方さんであることもすぐにわかった。穏やかな笑顔だ。整ったきれいな顔で、やっぱり清躬とつりあっている。問題は左の女性だ。このひともきれいでわかいが、棟方さんよりは年長に見える。