おじさんは、ぼくのからだをあっちこっちさわりながら、しきりにうなっています。
ふと見ると、おばあさん犬のいた巣には、白いユリの花がおかれていました。
おばあさん犬のにおいは、ついさっきまで、そこにいたことをおしえています。
『どこなの?おばあさ~ん』
ク~ン、ク~ン……。
ぼくは、ユリの花を見ながら、はなをならしつづけました。
「おまえにも、わかるのかい……?」
青いふくのおじさんが、少しかなしそうなかおで、ぼくのあたまをなでてくれました。
ぼくは、ハッと気がつきました。
『あっ!おばあさん、死んじゃったんだね?』
ワンワン!
ぼくはおじさんに、そうほえてみました。
『きゅうに、きえちゃうなんて!さよならする間も、なかったよ!』
ウ~、ワンワン!
「よしよし、すっかり元気になったな」
おじさんは、まんぞくそうにうなりながら、どこかに行ってしまいました。
『ぼくも、いつかきゅうに、きえちゃうのかな。だれにも、さよならする間もなく…』
ク~ン、ク~ン……。
『死ぬって、こわい。すごくこわいよ』
ぼくは、おばあさん犬のにおいにつつまれながら、ひとりぼっちで丸くなりました。