常夏

なんだか大滝ナースがやけに気忙しいのが気になりアッキーママは不思議に思い聞いてみた。

「どうしてそんなに急ぐのでしょうか、同じ部屋の人達に挨拶したいです」
「そんなこと言っていたら、予約が取り消されるわ。いやでしょう、それでもいい?」

大滝ナースはもうアッキーママに有無を言わせない勢いがあった。エレベーターボタンを押すとすぐに扉は開き、アッキーママはベッドに乗ったままエレベーターに押し込まれた。それはスノボで滑り落ちるようで爽快感があった。

どうやらエレベーターは下に下がっている様子である。七〇七号室って七階の見晴らしのいい部屋よねと、アッキーママの不安が次第に恐怖へと変わるのにそれほど時間を必要としなかった。後ろを振り返り大滝ナースに尋ねようとした、が、そこには大滝ナースは居なかった。

アッキーママとスーツケースがベッドの狭い空間を息苦しくさせていた。それからすぐにドスンとエレベーターは止まった。エレベーターの扉は開いた。

なんだ、大滝ナースはいたずらでもしたのだろうか、そこは常夏ハワイアンズでないか、教養ある表現で言うならばフランスの美術館のようでもあった。本当に絵を描いている人もたくさんいた。