3歳児健診(母子保健法)が終わると、次は就学時健診(学校保健法)まで法によって定められた公的な集団健診はありません。たいていのお子さんは3歳過ぎから幼稚園などへ入園し、集団に入って初めて行動の問題に気づかれることも珍しくありません。

そのためにも、集団生活に入ったあとの5歳あたりで再度健診をして親御さんや園の悩みを聞くべきなのです。そうすることで就学までに改善策を練ることも可能なのです。

また、親御さんはお子さんの発達障がいに気づいたあと、できるだけ早期に医療へつなげていくことが大切です。それでも何かあったら、近所のかかりつけ医にまずは相談してみましょう。大学病院の先生などに「何かあったらまた来てください」と言われてもなかなか気軽に相談できず、つい行きそびれてしまう場合が多いのです。

しかも、予約しようにも数カ月先となりすぐに予約が入らず、受診する頃には別の問題が生じているということもよくあります。そうならないためにも、何かあったら行くのではなく、必ず次に行く外来日を定期的に予約しておくことも大切です。

それでも何かあったら、近所のかかりつけ医にまずは相談してみましょう。この章では、ADHDの治療を中心に発達障がいの改善方法を見てきました。

これらの治療は、もちろん発達障がいに悩んでいるお子さんや本人を助けるために大切なことなのですが、それは、同時に周りの人たちを幸せにすることにもつながります。次の章では、発達障がいを改善することで、周りにどのような変化が起こるのかといったことを中心に、話を進めていきたいと思います。

第三章 治療のゴールは家族の幸せ

家族の発達障がいを一人で悩む母親

発達障がいのお子さんと向き合うためには、一人で抱え込むのではなく、さまざまな人たちの支援を受けることが必要です。母親のもっとも支えになるのはすぐそばにいる夫なのですが、残念ながらなかなか父親と母親の両方が手を取り合ってお子さんと向き合うというケースが少ないのが現状です。

それは、前述した通り、お子さんが発達障がいを抱えている場合、両親のどちらか一方が濃い発達障がいである可能性が高いため、片方の淡い親御さん、特に母親に負担がかかっていることが多いからです。お子さんの治療にと通ってきたIさんは、げっそりとした顔で診療室に入ってきました。