「なき声がうるさいって、おとなりさんから、もんくを言われちゃったわ」
「それは、こまったな…」
パパも、なんだかこわいかおで、うなり声を立てています。
「おまえ、しずかにしないと、ここにはいられないんだぞ?」
お兄ちゃんも、しんぱいそうに、なにかうなりました。
『えっ、なに? なんて言ったの? ぼく、わからないよ』
ぼくは、ワンワンほえながら、みんなのまわりをとびはねました。
すると、なぜかみんな、ぼくを見て、大きなためいきをつきました。
それから間もなく、ぼくはまた、ゴミおきばにつれてこられました。
「ごめんよ。やっぱりうちでは、かってあげられないんだ」
お兄ちゃんは、かなしそうなかおで、ぼくのあたまをなでました。
そして、いきなりじてん車にとびのると、ぼくをおいて、走り出してしまいました。
『あっ! まって! まってよ!』
ワンワン、ワンワン!
ぼくは、ダンボールのかべを、ひっしでのりこえようとしました。
でも、足がとどきません。
じてん車のお兄ちゃんは、どんどん遠ざかっていきます。
『ねぇ、ぼくをおいてかないでよ!』
キャン、キャン!
とうとうお兄ちゃんのすがたは、夜のやみにすいこまれてしまいました。
『なんで? どうして? ぼく、なにかわるいことしちゃったの?』
ク~ン、ク~ン…。
そのうち、つめたい雨がふってきました。
ぼくはプルプルふるえながら、ダンボールばこのすみにうずくまりました。