沙希が帰ってきたのは家を空けてから七日目だった。雫の喜びそうな土産とともに沙希が登場すると、雫はまるで衛星のように彼女の周りを周回し、マシンガンのようにトークを浴びせた。沙希も楽しげに雫の相手をしてはいたが、少しやつれた様子は隠せない。やはり何かあったのだろう。しばらくして一段落つくと、沙希が声をかけてきた。
「研ちゃん。後で少しお話ししたいことがあるの」
口元は微笑んではいたが、目には深刻さが窺える。
「お義父さんの具合が良くないの?」
「いえ。それはもう大丈夫。心配をかけてごめんなさい」
「それを聞いてほっとしたよ。分かった。いつでもいいよ。書斎にいるから声をかけて」
しばらくすると沙希が珈琲を持ってきた。お互い珈琲に口をつけている間は雫のことなど、たわいのない話をした。その後、しばし沈黙があり、沙希が切り出した。
「あの、実家のことなんだけど」
「やはりお義父さんの具合が?」
「いえ、そうじゃないの」
と言って沙希は珈琲に口をつけた。