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彼は、ゆっくりと私を見て答えた。
「わかりません。ただなんとなく、ちゃんと首までボタンを閉めていると、悪いことできないなあって。
うちの祖父の教えです。
身なりを整えておくと、心も整うからと。外側と内側は、繋がっているのだからと。はは。そんなに真剣に質問を返されるとは思わなかった。
じゃあ、あなたは正しく生きられていますか?」
何について?
何に対しての正しさだろう。
あまりに漠然とした質問を私は彼にしたのだと、彼に同じ質問をされて気づく。
彼は私からの答えを待っている。少し切れ長の目に、まつ毛が下に向かってしっかりと生えている。なので前を向いていても、彼は少しだけうつむいて見えた。鼻筋は通っていて、髪を後ろに撫であげてセットしていたので、その顔を私はよく見ることができた。あまり表情をつけない喋り方をしたけれど、その声は柔らかで心地よかった。
しばらく考えて、私はさらに彼を真っ直ぐに見た。