第9話「異変」

空は2年生になってから、学校へ行かない日がだんだん増えました。私は何とかして行かせようとし、空とけんかしました。大好きなとても大事な空を嫌いだとも思いました。

もうどうしていいのか分からずにとても悩みました。普通ならこんな時は夫に相談するものですが、空が学校に行っていないなんて言ったらどうなるか、考えただけでも恐ろしくて言えませんでした。

空が休んで家にいると、仕事に出て行ったはずの夫が突然帰ってきたり、大ピンチだったと後から空に聞いたりしました。空はもう、こんな家は嫌だと言います。私も本当に嫌でした。

空に言い聞かせて、きちんと学校へ行って、ちゃんと高校へ行ける様にしないといけない。とても遠い寮のある高校へ行けば父ちゃんと会わずに暮らせるのではとか、私にとって、それは一番の生きがいである空と離れて暮らさなければならない事で、夫と二人きりになったら何も楽しみが無くなってしまう様な気がして、本当はとても嫌な事だったのですが、空の為だと思い話し合いました。

空とは時間があれば何度も高校をどうするかについて話し合いました。本当に色々な候補が出ましたが、クラブ活動で毎日遅くまで練習していれば、あまり父ちゃんと会わずに済むんじゃないかという事で決定しました。

これも良かったのかどうか、今となっては何とも言えないのですが、空も中学三年生ではちゃんと学校へ行く様になり、考えていた高校に無事に入る事ができました。空は中学二年生の時に引きこもっていた分、出席日数やら、勉強もしていなかったから成績が良く無かったやらで、私立高校にしか行けないという事で、やはりその事を夫にくどくど言われていました。

私は仕事でだんだんと手を痛めていたらしく、しびれて痛みがひどくなってきて、病院へ行きました。何かのスジが外れていて神経に当たって痛みやらしびれが出るのだと言われ、日常生活で特別困らなかったら、手術もしなくてもいいでしょうと言う事でした。

そのままにしましたが今の仕事はちょっと続けられそうにないと思い、別の仕事を探す事にしました。新しく始めた仕事は最初は良かったのですが、だんだんとその会社の本質が分かってきました。本当のブラック企業だったのです。取っていないはずなのに休憩時間として時給を引かれていたり、残業が付かなかったり、休日に会議に出ても無給だったりしました。

給料もいいので仕方ないかなと思っていたけど、もう限界だと思い夫にもさすがに相談してみると、夫も毎日私の帰りが遅い事をおかしいとよく話していたので、夫が会社へ怒って電話をしました。上司がすぐに家まで謝りに来ましたが、夫は家へ入れませんでした。

労働基準監督署へ訴えてもいいんだと言うと上司は私に何とか考え直して働いてほしいとか、何度も話し合いました。私は辞めると言ったのでいわゆる口止め料をもらい、これ以上文句を言いませんという誓約書を書いて辞める事になりました。夫はぶつぶつ言っていましたが、「もういいよ。何度も話すのも疲れたよ。」との私の言葉にそれ以上は言いませんでした。